第 10 回では、ベクトル場を曲線に沿って足し合わせる 線積分
∫CF⋅dr
を見ました。
今回は、曲線ではなく 面 に注目します。
ベクトル場が面をどれだけ通り抜けるか
を測る量を考えます。
これが 面積分 です。
さらに、その面積分と発散が深く結びついていることを表すのが ガウスの発散定理 です。
1. 今回学ぶこと
この記事では、次の内容を扱います。
2. 直感的なイメージ
ベクトル場を流れ場だと思ってください。
空間の中に薄い膜のような面を置くと、その面を
- 外へ突き抜ける流れ
- 内へ入り込む流れ
- 面に沿って横に流れるだけの流れ
があります。
このうち、面積分が見ているのは
面に垂直な向きにどれだけ流れが通過しているか
です。
面に沿って流れている成分は、面を通り抜けていないので寄与しません。
そして、もし閉じた面で空間の一部分を囲うと、その内部で湧き出した流れの総量と、表面から外へ出ていく流れの総量は一致しそうです。
この直感を正確に表したものが発散定理です。
3. 基本事項
3.1 面積分とは何か
曲面
S
とベクトル場
F
に対して、面積分を
∬SF⋅ndS
と書きます。
ここで
- n は曲面の単位法線ベクトル
- dS は微小な面積
です。
したがって
F⋅n
は、その点でベクトル場が法線方向にどれだけ成分を持つかを表します。
それに微小面積 dS を掛けて、面全体で足し合わせたものが面積分です。
3.2 なぜ内積が出てくるのか
線積分で内積が出てきたのは、進む向きの成分だけを取り出すためでした。
面積分でもまったく同じ考え方です。
今度は「進む向き」ではなく「面に垂直な向き」を見たいので、
F⋅n
という内積で、法線方向成分を取り出しています。
したがって、
- ベクトル場が法線と同じ向きなら正
- 逆向きなら負
- 面に接する向きなら 0
になります。
3.3 流束という見方
面積分
∬SF⋅ndS
は 流束 と呼ばれることが多いです。
これは、曲面を通り抜ける流れの総量という意味です。
たとえば流体の速度場なら、
- 外向きに大きければ流束は正
- 内向きに大きければ流束は負
と読めます。
つまり面積分は、ベクトル場の「面を横切る強さ」を測っているわけです。
3.4 パラメータ表示での計算
曲面 S が
r(u,v)=x(u,v)y(u,v)z(u,v)((u,v)∈D)
のようにパラメータ表示されているとします。
このとき、曲面の向きを持った微小面積は
ndS=(∂u∂r×∂v∂r)dudv
で表されます。
したがって面積分は
∬SF⋅ndS=∬DF(r(u,v))⋅(∂u∂r×∂v∂r)dudv
となります。
この
ndS=(∂u∂r×∂v∂r)dudv
の形がなぜ自然に出るのかは、次の記事で補足しています。
寄り道
実際の計算手順は
- 曲面をパラメータ表示する
- ru,rv を求める
- 外積 ru×rv を作る
- ベクトル場を代入して内積をとる
- 最後に 2 変数積分する
です。
たとえば、xy 平面上の単位正方形
0≤x≤1,0≤y≤1,z=0
を上向きに向けた面 S とし、
F(x,y,z)=002
を考えます。
このとき
r(u,v)=uv0(0≤u,v≤1)
とおけるので、
ru=100,rv=010
です。
したがって
ru×rv=001
となり、
F(r(u,v))⋅(ru×rv)=002⋅001=2
です。
よって
∬SF⋅ndS=∫01∫012dudv=2
となります。
つまり、上向きに一定の強さ 2 で流れている場が、面積 1 の正方形を通り抜けるので、流束は 2 になります。
3.5 閉曲面と外向き法線
発散定理を使うときは、曲面が 閉曲面 であることが重要です。
閉曲面とは、球面や立方体の表面のように、中身を完全に囲っている面です。
このとき法線ベクトルは普通、
内部から外へ向かう向き
を正としてとります。
これを 外向き法線 といいます。
どちら向きを正にとるかで面積分の符号が変わるので、向きは本質的です。
3.6 ガウスの発散定理
閉曲面 S が立体 V の境界
S=∂V
になっているとき、
∭VdivFdV=∬SF⋅ndS
が成り立ちます。
これが ガウスの発散定理 です。
左辺は、立体の内部での発散を体積全体で足し合わせたものです。
つまり
内部でどれだけ流れが湧き出しているかの総量
を表します。
右辺は、その立体を囲む表面を通って外へ出ていく流れの総量です。
つまり発散定理は、
中で生まれた流れの総量 = 表面から外へ出ていく総量
と言っているわけです。
寄り道
3.7 発散定理の具体例
ベクトル場
F(x,y,z)=xyz
を考え、S を単位球面、V をその内部とします。
このとき
divF=∂x∂x+∂y∂y+∂z∂z=3
です。
したがって
∭VdivFdV=∭V3dV=3Vol(V)
です。
単位球の体積は
Vol(V)=34π
なので、
∭VdivFdV=4π
となります。
発散定理より、これはそのまま球面を通る外向き流束
∬SF⋅ndS
の値でもあります。
実際、単位球面では外向き単位法線ベクトルは
n=xyz
です。
また球面上では
F=xyz
なので
F⋅n=x2+y2+z2=1
となります。
したがって
∬SF⋅ndS=∬S1dS=4π
です。
このように、体積積分を計算しても面積分を計算しても同じ値 4π になります。
4. 例題
例題 1
ベクトル場
F(x,y,z)=003
に対して、xy 平面上の単位正方形
0≤x≤1,0≤y≤1,z=0
を上向きに向けた面 S を通る流束を求めよ。
解答
法線ベクトルは
n=001
です。
したがって
F⋅n=3
なので、
∬SF⋅ndS=∫01∫013dxdy=3
です。
例題 2
ベクトル場
F(x,y,z)=xyz
に対して、単位球面を通る外向き流束を求めよ。
解答
発散は
divF=3
です。
単位球の体積は
34π
なので、まず体積側は
∭V3dV=3⋅34π=4π
です。
一方、単位球面では外向き単位法線ベクトルが
n=xyz
であり、球面上では
F=xyz
なので
F⋅n=1
です。
したがって面積側は
∬SF⋅ndS=∬S1dS=4π
となり、両辺が一致します。
例題 3
ベクトル場
F(x,y,z)=−yx0
に対して、任意の閉曲面を通る外向き流束を求めよ。
解答
発散は
divF=∂x∂(−y)+∂y∂x+∂z∂0=0
です。
したがって体積側は
∭V0dV=0
です。
また面積側も 0 になります。
実際、このベクトル場
F(x,y,z)=−yx0
は原点のまわりを回る場で、外向きにも内向きにも湧き出していません。
したがって任意の閉曲面を通って外へ出る正味の流れは 0 です。
つまりこの例でも、体積側と面積側はともに 0 で一致します。
5. 練習問題
練習問題 1
ベクトル場
F(x,y,z)=005
に対して、xy 平面上の面積 2 の領域を上向きに向けたときの流束を求めてください。
解答を見る
法線方向成分は常に 5 です。
したがって流束は
5×2=10
です。
練習問題 2
ベクトル場
F(x,y,z)=x00
の発散を求めてください。
解答を見る
divF=∂x∂x+∂y∂0+∂z∂0=1
です。
練習問題 3
ベクトル場
F(x,y,z)=xyz
に対して、半径 2 の球の内部で
∭VdivFdV
を求めてください。
解答を見る
発散は 3 です。
半径 2 の球の体積は
34π(23)=332π
なので
∭VdivFdV=3⋅332π=32π
です。
練習問題 4
発散定理が、どのような意味で「内部」と「表面」を結びつけているのかを言葉で説明してください。
解答を見る
発散定理は、立体の内部でどれだけ流れが湧き出しているかを全部足した量が、その立体を囲む表面から外へ出ていく流れの総量に等しいことを表しています。
つまり局所的な発散の情報を、境界全体を通る流束に結びつけています。
6. まとめ
今回は、ベクトル場が面をどれだけ通り抜けるかを表す 面積分 と、その総量を内部の発散と結びつける ガウスの発散定理 を見ました。
重要だったのは、
- 面積分 ∬SF⋅ndS は法線方向成分の総和である
- 面に沿う成分ではなく、面を突き抜ける成分だけが効く
- パラメータ表示では ru×rv を使って計算できる
- 閉曲面では外向き法線をとる
- 発散定理は「内部の発散の総量 = 表面から出る流束」を表す
という点です。
第 10 回では曲線に沿って量を足し合わせる線積分を見ましたが、今回はそれを面に対して行う面積分を見ました。
次回は、面の上の回転と、その境界曲線に沿う線積分を結びつける ストークスの定理 に進みます。