発散定理
∭VdivFdV=∬∂VF⋅ndS
は、ベクトル解析の中でもとても重要な定理です。
ただ、初めて見ると
どうして内部の発散を積分したものが、表面を通る流れに一致するのか
が見えにくいかもしれません。
この記事では、その理由を小さな直方体で考えるところから整理します。
1. まずは小さな直方体で考える
ベクトル場
F(x,y,z)=P(x,y,z)Q(x,y,z)R(x,y,z)
を考えます。
空間の中に、辺の長さが小さい直方体を 1 つ取ります。
この小箱から外へ出る流れは、
- x 方向の左右の面
- y 方向の前後の面
- z 方向の上下の面
からの出入りに分けられます。
2. x 方向だけ見る
まず x 方向成分 P だけに注目します。
右側の面から外へ出る量は、およそ
P(x+Δx,y,z)ΔyΔz
です。
左側の面では外向き法線が逆向きなので、寄与は
−P(x,y,z)ΔyΔz
です。
したがって左右の面を合わせた正味の流れは
(P(x+Δx,y,z)−P(x,y,z))ΔyΔz
になります。
これは微分の考え方から
∂x∂PΔxΔyΔz
に近いです。
つまり
∂x∂PΔV
になります。
3. y, z 方向も足す
同じことを Q と R に対して行うと、
∂y∂QΔV,∂z∂RΔV
が出てきます。
したがって小箱全体から外へ出る正味の流れは
(∂x∂P+∂y∂Q+∂z∂R)ΔV=(divF)ΔV
になります。
つまり小さな直方体については
内部での発散 × 体積 = 表面から出ていく正味の流れ
となっています。
4. それを全部の小箱で足す
次に、立体 V 全体をたくさんの小箱に分けることを考えます。
各小箱について
発散による湧き出し量 = その小箱の表面流束
が成り立つので、それらを全部足し合わせます。
すると内部で隣り合っている面では、
- 片方の小箱から見れば外へ出る流れ
- 隣の小箱から見れば外へ入る流れ
になって、ちょうど打ち消し合います。
したがって最後に残るのは、立体全体のいちばん外側の面を通る流れだけです。
これが
∭VdivFdV=∬∂VF⋅ndS
の中身です。
5. 発散定理の意味
この見方をすると、発散定理は
- 左辺が内部での局所的な湧き出し量の総和
- 右辺が境界全体を通って外へ出る流れの総量
を表しています。
つまり発散定理は、
各点での局所的な情報を、境界全体で見える大域的な量へまとめる定理
です。
ここで本質なのは、内部の面が消えて境界だけが残ることです。
6. まとめ
重要なのは、
- 小さな直方体では、各方向の出入りの差が偏微分で表される
- それらを足すと (divF)ΔV になる
- 立体全体を小箱に分けて足すと、内部の面の寄与は打ち消し合う
- 最後に境界の流束だけが残る
という点です。
この見方が分かると、発散定理は突然現れる公式ではなく、局所の出入りを全部足した自然な結果として読めるようになります。