ベクトル解析完全講座 第12回 ストークスの定理

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第 11 回では、面積分

SFndS\iint_S \mathbf{F}\cdot \mathbf{n}\,dS

と、発散定理

VdivFdV=VFndS\iiint_V \operatorname{div}\mathbf{F}\,dV = \iint_{\partial V} \mathbf{F}\cdot \mathbf{n}\,dS

を見ました。

今回はそれと対になる定理として、

境界曲線に沿ってまわる量と、面の上での回転の総量を結びつける定理

を考えます。

これが ストークスの定理 です。

1. 今回学ぶこと

この記事では、次の内容を扱います。

  • ストークスの定理
  • 線積分と面積分の関係
  • 回転の面積分
  • ガウスの発散定理との比較

2. 直感的なイメージ

ベクトル場を流れ場だと思ってください。

ある曲面 SS をとり、その境界に沿って 1 周する閉曲線 CC を考えます。

このとき、境界 CC に沿って流れがどれだけ回ろうとしているかを測るのが線積分

CFdr\oint_C \mathbf{F}\cdot d\mathbf{r}

です。

一方で、第 9 回で見た回転

rotF\operatorname{rot}\mathbf{F}

は、各点での局所的な回転傾向を表していました。

したがって、

面全体の中でどれだけ回転傾向が積み重なっているか

を足し合わせれば、境界を 1 周したときの回り方に対応しそうです。

この直感を正確に表したものがストークスの定理です。

3. 基本事項

3.1 ストークスの定理

向きを持つ曲面 SS と、その境界である閉曲線

C=SC=\partial S

に対して、

CFdr=S(rotF)ndS\oint_C \mathbf{F}\cdot d\mathbf{r} = \iint_S (\operatorname{rot}\mathbf{F})\cdot \mathbf{n}\,dS

が成り立ちます。

これが ストークスの定理 です。

左辺は、境界曲線に沿うベクトル場の線積分です。

右辺は、回転ベクトル

rotF\operatorname{rot}\mathbf{F}

の法線方向成分を面全体で足し合わせた面積分です。

つまりストークスの定理は、

境界に沿ってまわる量 = 面の上の回転の総量

を表しています。

3.2 なぜ回転の法線方向成分なのか

回転

rotF\operatorname{rot}\mathbf{F}

はベクトルです。

しかし、曲面 SS に対して本当に効いているのは、その面に垂直な方向の回転だけです。

面に平行な方向の回転ベクトルは、その面をまたぐ小さな循環には直接効きません。

そこで

(rotF)n(\operatorname{rot}\mathbf{F})\cdot \mathbf{n}

によって、法線方向成分だけを取り出します。

これは第 11 回で、面積分で

Fn\mathbf{F}\cdot \mathbf{n}

を使って法線方向成分を取り出したのと同じ考え方です。

3.3 向きの約束

ストークスの定理では、曲面の向きと境界曲線の向きが対応していなければなりません。

法線ベクトル n\mathbf{n} を決めると、境界曲線の正の向きは 右ねじの法則 で決まります。

たとえば法線が上向きなら、上から見て反時計回りが正の向きです。

この向きが逆になると、線積分の符号も面積分の符号も変わります。

3.4 小さな面の循環を足すという見方

ストークスの定理は、曲面を細かく分けて考えると、

  • 各小片での局所的な回転
  • それを全部足したときに残る境界の循環

が対応している定理だと思うとイメージしやすいです。

なぜそうなるのかをきちんと追うには、内部の共有辺がどう打ち消し合うかまで見る必要があります。 その説明は本体では深入りせず、補足記事に分けます。

寄り道

3.5 平面領域での見え方

xyxy 平面内の領域 DD を上向き法線

n=(001)\mathbf{n}= \begin{pmatrix} 0\\[0.35em] 0\\[0.35em] 1 \end{pmatrix}

で見ると、ストークスの定理は

DFdr=D(rotF)ndA\oint_{\partial D} \mathbf{F}\cdot d\mathbf{r} = \iint_D (\operatorname{rot}\mathbf{F})\cdot \mathbf{n}\,dA

となります。

2 次元のベクトル場

F(x,y)=(P(x,y)Q(x,y))\mathbf{F}(x,y)= \begin{pmatrix} P(x,y)\\[0.35em] Q(x,y) \end{pmatrix}

を 3 次元に持ち上げて考えると、

(rotF)n=QxPy(\operatorname{rot}\mathbf{F})\cdot \mathbf{n} = \frac{\partial Q}{\partial x} - \frac{\partial P}{\partial y}

です。

したがって平面では、境界に沿う線積分が、領域全体の回転の総量と一致することになります。

3.6 具体例

ベクトル場

F(x,y,z)=(yx0)\mathbf{F}(x,y,z)= \begin{pmatrix} -y\\[0.35em] x\\[0.35em] 0 \end{pmatrix}

を考え、SSxyxy 平面上の単位円板、C=SC=\partial S をその境界の単位円とします。

第 9 回で見たように、

rotF=(002)\operatorname{rot}\mathbf{F} = \begin{pmatrix} 0\\[0.35em] 0\\[0.35em] 2 \end{pmatrix}

です。

法線を上向きにとると

(rotF)n=2(\operatorname{rot}\mathbf{F})\cdot \mathbf{n}=2

なので、

S(rotF)ndS=S2dS=2π\iint_S (\operatorname{rot}\mathbf{F})\cdot \mathbf{n}\,dS = \iint_S 2\,dS = 2\pi

となります。

ストークスの定理より、これは境界円に沿う線積分

CFdr\oint_C \mathbf{F}\cdot d\mathbf{r}

の値でもあります。

実際、境界円 CC

r(t)=(costsint0)(0t2π)\mathbf{r}(t)= \begin{pmatrix} \cos t\\[0.35em] \sin t\\[0.35em] 0 \end{pmatrix} \qquad (0\le t\le 2\pi)

とおくと、

r(t)=(sintcost0)\mathbf{r}'(t)= \begin{pmatrix} -\sin t\\[0.35em] \cos t\\[0.35em] 0 \end{pmatrix}

です。

また

F(r(t))=(sintcost0)\mathbf{F}(\mathbf{r}(t))= \begin{pmatrix} -\sin t\\[0.35em] \cos t\\[0.35em] 0 \end{pmatrix}

なので、

F(r(t))r(t)=sin2t+cos2t=1\mathbf{F}(\mathbf{r}(t))\cdot \mathbf{r}'(t) = \sin^2 t+\cos^2 t =1

となります。

したがって

CFdr=02π1dt=2π\oint_C \mathbf{F}\cdot d\mathbf{r} = \int_0^{2\pi}1\,dt =2\pi

です。

このように、面積分を計算しても線積分を計算しても同じ値 2π2\pi になります。

つまりこの場では、円板全体に一様な回転傾向が広がっており、その総量が境界の循環として現れます。

3.7 ガウスの発散定理との比較

第 11 回のガウスの発散定理は

VdivFdV=VFndS\iiint_V \operatorname{div}\mathbf{F}\,dV = \iint_{\partial V} \mathbf{F}\cdot \mathbf{n}\,dS

でした。

これは

  • 内部の湧き出し量
  • 境界面を通る流束

を結びつける定理です。

一方、ストークスの定理は

  • 面の上の回転の総量
  • 境界曲線に沿う循環

を結びつけます。

つまり

  • ガウスの定理は 体積と面
  • ストークスの定理は 面と線

を結ぶ定理です。

この対応を見ると、ベクトル解析全体がきれいに整理されます。

4. 例題

例題 1

ベクトル場

F(x,y,z)=(yx0)\mathbf{F}(x,y,z)= \begin{pmatrix} -y\\[0.35em] x\\[0.35em] 0 \end{pmatrix}

に対して、xyxy 平面上の半径 1 の円板を上向きに向けたとき、

S(rotF)ndS\iint_S (\operatorname{rot}\mathbf{F})\cdot \mathbf{n}\,dS

を求めよ。

解答

rotF=(002)\operatorname{rot}\mathbf{F} = \begin{pmatrix} 0\\[0.35em] 0\\[0.35em] 2 \end{pmatrix}

です。

したがって

(rotF)n=2(\operatorname{rot}\mathbf{F})\cdot \mathbf{n}=2

です。

円板の面積は π\pi なので、

S(rotF)ndS=2π\iint_S (\operatorname{rot}\mathbf{F})\cdot \mathbf{n}\,dS = 2\pi

です。

例題 2

ベクトル場

F(x,y,z)=(100)\mathbf{F}(x,y,z)= \begin{pmatrix} 1\\[0.35em] 0\\[0.35em] 0 \end{pmatrix}

に対して、任意の曲面 SS とその境界 CC について

CFdr\oint_C \mathbf{F}\cdot d\mathbf{r}

の値を求めよ。

解答

このベクトル場では

rotF=(000)\operatorname{rot}\mathbf{F} = \begin{pmatrix} 0\\[0.35em] 0\\[0.35em] 0 \end{pmatrix}

です。

したがって面積側は

S(rotF)ndS=0\iint_S (\operatorname{rot}\mathbf{F})\cdot \mathbf{n}\,dS =0

です。

また線積分の側も

CFdr=C1dx\oint_C \mathbf{F}\cdot d\mathbf{r} = \oint_C 1\,dx

ですが、閉曲線では始点と終点の xx 座標が同じなので

C1dx=0\oint_C 1\,dx=0

です。

したがってこちらも 0 で、両辺が一致します。

例題 3

ストークスの定理とガウスの発散定理の違いを説明せよ。

解答

ストークスの定理は、面の上の回転の総量と、その境界曲線に沿う循環を結びつけます。

ガウスの発散定理は、立体内部の発散の総量と、その境界面を通る流束を結びつけます。

つまり、前者は面と線の関係、後者は体積と面の関係を扱っています。

5. 練習問題

練習問題 1

ベクトル場

F(x,y,z)=(yx0)\mathbf{F}(x,y,z)= \begin{pmatrix} -y\\[0.35em] x\\[0.35em] 0 \end{pmatrix}

の回転を求めてください。

解答を見る rotF=(002)\operatorname{rot}\mathbf{F} = \begin{pmatrix} 0\\[0.35em] 0\\[0.35em] 2 \end{pmatrix}

です。

練習問題 2

ベクトル場

F(x,y,z)=(000)\mathbf{F}(x,y,z)= \begin{pmatrix} 0\\[0.35em] 0\\[0.35em] 0 \end{pmatrix}

に対して、

CFdr\oint_C \mathbf{F}\cdot d\mathbf{r}

の値を求めてください。

解答を見る

常に 0 ベクトルなので、線積分も 0 です。

ストークスの定理を使っても、回転が 0 なので値は 0 です。

練習問題 3

ストークスの定理で、右辺に

(rotF)n(\operatorname{rot}\mathbf{F})\cdot \mathbf{n}

が現れる理由を説明してください。

解答を見る

回転はベクトルですが、曲面に対して効くのは法線方向成分だからです。

したがって、面に垂直な向きの回転だけを取り出すために

(rotF)n(\operatorname{rot}\mathbf{F})\cdot \mathbf{n}

が現れます。

練習問題 4

ストークスの定理とガウスの発散定理が、それぞれ何と何を結びつける定理かを説明してください。

解答を見る

ストークスの定理は、面の上の回転の総量と境界曲線に沿う循環を結びつけます。

ガウスの発散定理は、体積内部の発散の総量と境界面を通る流束を結びつけます。

6. まとめ

今回は、境界曲線に沿う線積分と、面の上の回転の総量を結びつける ストークスの定理 を見ました。

重要だったのは、

  • ストークスの定理は CFdr=S(rotF)ndS\oint_C \mathbf{F}\cdot d\mathbf{r}=\iint_S (\operatorname{rot}\mathbf{F})\cdot \mathbf{n}\,dS である
  • 線積分による循環と、回転の面積分が対応している
  • 右辺では回転の法線方向成分だけを見ている
  • 曲面の向きと境界曲線の向きは右ねじの法則で対応する
  • ガウスの定理が体積と面を結ぶのに対して、ストークスの定理は面と線を結ぶ

という点です。

ここまでで、

  • 勾配
  • 発散
  • 回転
  • 線積分
  • 面積分
  • ガウスの発散定理
  • ストークスの定理

という、ベクトル解析の基本的な道具を一通り見ました。

個々の公式を別々に覚えるのではなく、

  • スカラー場から勾配が生まれる
  • ベクトル場から発散や回転が生まれる
  • それらを積分すると、境界との関係を表す定理が現れる

という流れで見ると、全体が 1 本につながって見えてきます。

この第 12 回で、ベクトル解析完全講座は完結です。

もちろん各定理の厳密な証明や、より一般の曲面・曲線での扱いなど、先にはまだ発展的な内容があります。 ただ少なくとも、

  • ベクトルとは何か
  • ベクトル場をどう読むか
  • 勾配・発散・回転が何を表すか
  • 線積分・面積分と境界の関係をどう見るか

というベクトル解析の基本的な地図は、ここまでで一通りそろいました。

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