第 8 回では、ベクトル場
F(x,y),F(x,y,z)
に対して、その点の近くで流れが湧き出しているか、吸い込まれているかを表す 発散 を見ました。
今回はそれと対になる量として、
その点の近くで流れが回ろうとしているか
を調べる量を考えます。
これが 回転 です。
1. 今回学ぶこと
この記事では、次の内容を扱います。
- rotF=∇×F
- 回転の意味
- 発散との違い
- 3 次元での成分表示
- 2 次元の流れとの関係
ゴールは
回転を、ベクトル場の局所的な「回ろうとする強さ」として読めるようになること
です。
2. 直感的なイメージ
ベクトル場を流れ場だと思ってください。
ある点の近くで、流れがその点のまわりをぐるっと回るようになっていれば、その場には「回転しようとする傾向」があります。
逆に、
- ただ外へ広がるだけ
- ただ内へ集まるだけ
- まっすぐ同じ向きに流れるだけ
なら、回転の傾向は小さい、あるいは 0 だと考えられます。
つまり回転は、
とは別に、
を表す量です。
3. 基本事項
3.1 回転とは何か
ベクトル場
F
に対して、その回転を
rotF
または
∇×F
と書きます。
rot は rotation の略です。
ここで
∇×F
の × は、単なる飾りではなく「外積の形」をしています。
第 8 回で ∇ をベクトル演算子
∇=∂x∂∂y∂∂z∂
と見たのと同じように考えると、回転は
ベクトル演算子 ∇ とベクトル場 F の外積
として読むことができます。
この見方が、式の形を理解するうえで大事です。
3.2 回転の結果はベクトル
発散では
divF
の結果は実数、つまりスカラー場になりました。
一方で回転
rotF
の結果は ベクトル です。
つまり回転は、ベクトル場から新しいベクトル場を作ります。
これは、外積の結果がベクトルになることとも対応しています。
3.3 3 次元での成分表示
3 次元のベクトル場
F(x,y,z)=P(x,y,z)Q(x,y,z)R(x,y,z)
に対して、回転は
rotF=∇×F=∂y∂R−∂z∂Q∂z∂P−∂x∂R∂x∂Q−∂y∂P
で与えられます。
この式は一見複雑ですが、∇×F を外積の形だと思って並べると自然に出てきます。
3.4 なぜ「回る傾向」を表すのか
たとえば 2 次元の流れ
F(x,y)=(P(x,y)Q(x,y))
を考えます。
このとき、
- 右へ行くほど上向き成分 Q が強くなる
- 上へ行くほど右向き成分 P が弱くなる
なら、全体として反時計回りに回りやすい流れになります。
この差を表しているのが
∂x∂Q−∂y∂P
です。
したがって回転は、単に矢印の向きが変わるかどうかではなく、
近くの流れのずれが、渦を作る向きに効いているか
を測っている量だと見なせます。
3.5 2 次元では z 成分だけを見る
2 次元のベクトル場でも、回転を 3 次元の式の名残で考えることが多いです。
このとき実質的に意味を持つのは
∂x∂Q−∂y∂P
だけです。
これは 3 次元の回転ベクトルの第 3 成分に対応します。
そのため 2 次元では、
- この値が正なら反時計回り
- この値が負なら時計回り
- 0 なら回転の傾向がない
と読むことが多いです。
3.6 例 1: 一様な流れ
たとえば
F(x,y)=(10)
を考えます。
これはどこでも右向き一定の流れです。
ここで
P(x,y)=1,Q(x,y)=0
なので
∂x∂Q=0,∂y∂P=0
です。
したがって
∂x∂Q−∂y∂P=0
となります。
つまり、一様な流れには回転の傾向はありません。
3.7 例 2: 原点のまわりを回る場
次に
F(x,y)=(−yx)
を考えます。
これは第 7 回で見た、原点のまわりを回る流れです。
このとき
P(x,y)=−y,Q(x,y)=x
なので
∂x∂Q=1,∂y∂P=−1
です。
したがって
∂x∂Q−∂y∂P=1−(−1)=2
となります。
正の値になっているので、反時計回りの回転傾向があると読めます。
矢印を追うと、流れが原点のまわりを反時計回りに回ろうとしていることが視覚的に分かります。
3.8 発散との違い
発散は
その点の近くで外へ出るか、内へ入るか
を見る量でした。
回転は
その点の近くで回ろうとしているか
を見る量です。
たとえば
F(x,y)=(xy)
は外向きに広がるので発散は正ですが、回る感じはありません。
逆に
F(x,y)=(−yx)
は回転の傾向がありますが、発散は 0 でした。
つまり、
は別の性質を見ていることが分かります。
4. 例題
例題 1
次のベクトル場の 2 次元的な回転
∂x∂Q−∂y∂P
を求めよ。
F(x,y)=(−yx)
解答
P(x,y)=−y,Q(x,y)=x
なので
∂x∂Q=1,∂y∂P=−1
です。
したがって
∂x∂Q−∂y∂P=2
です。
例題 2
次のベクトル場の 2 次元的な回転を求めよ。
F(x,y)=(xy)
解答
P(x,y)=x,Q(x,y)=y
なので
∂x∂Q=0,∂y∂P=0
です。
したがって
∂x∂Q−∂y∂P=0
です。
例題 3
次のベクトル場の回転を求めよ。
F(x,y,z)=yzx
解答
P=y,Q=z,R=x
なので
∂y∂R−∂z∂Q=0−1=−1
∂z∂P−∂x∂R=0−1=−1
∂x∂Q−∂y∂P=0−1=−1
したがって
rotF=−1−1−1
です。
5. 練習問題
練習問題 1
次のベクトル場の 2 次元的な回転を求めてください。
F(x,y)=(0x)
解答を見る
P(x,y)=0,Q(x,y)=x
なので
∂x∂Q=1,∂y∂P=0
です。
したがって
∂x∂Q−∂y∂P=1
です。
練習問題 2
次のベクトル場の 2 次元的な回転を求めてください。
F(x,y)=(y0)
解答を見る
P(x,y)=y,Q(x,y)=0
なので
∂x∂Q=0,∂y∂P=1
です。
したがって
∂x∂Q−∂y∂P=−1
です。
練習問題 3
次のベクトル場の回転を求めてください。
F(x,y,z)=00xy
解答を見る
P=0,Q=0,R=xy
なので
∂y∂R−∂z∂Q=x−0=x
∂z∂P−∂x∂R=0−y=−y
∂x∂Q−∂y∂P=0−0=0
したがって
rotF=x−y0
です。
練習問題 4
発散と回転の違いを言葉で説明してください。
解答を見る
発散は、その点の近くで流れが湧き出しているか、吸い込まれているかを見る量です。
回転は、その点の近くで流れが回ろうとしているかを見る量です。
つまり、発散は外向き・内向きの傾向、回転は渦を巻く傾向を表します。
6. まとめ
今回は、ベクトル場の局所的な回転傾向を表す 回転 を見ました。
重要だったのは、
- 回転は rotF または ∇×F と書く
- ∇ をベクトル演算子とみると、回転は ∇ と F の外積の形で読める
- 回転の結果は実数ではなくベクトルである
- 2 次元では ∂x∂Q−∂y∂P が本質的な量になる
- この値が正なら反時計回り、負なら時計回り、0 なら回転傾向がない
- 発散と回転は別の性質を見ている
という点です。
ここまでで、ベクトル場に対して
という 2 つの基本的な量を見ました。
次回は、いよいよベクトル場に沿って量を足し合わせる 線積分 に進みます。