ストークスの定理はなぜ成り立つのか
ストークスの定理
は、第 12 回で出てきた重要な定理です。
ただ、最初に見ると
どうして境界曲線に沿う線積分が、面の上の回転の総量に一致するのか
が見えにくいかもしれません。
この記事では、その理由を「小さな面片の循環を全部足す」という見方から整理します。
1. まずは小さな面片で考える
曲面の上のごく小さな面片を 1 つ取り、そのまわりをぐるっと 1 周するとします。
このときの線積分
は、その小さな面片の周囲で流れがどれだけ回ろうとしているかを表します。
一方、第 9 回で見た回転
は、各点での局所的な回転傾向を表していました。
したがって小さな面片については、
その小片の循環は、回転の法線方向成分 × 面積
に近いはずです。
つまり近似的に
となります。
ここで法線方向成分が出てくるのは、面に対して効く回転が、その面に垂直な向きの回転だからです。
2. 小さな面片を全部足す
次に、曲面 全体をたくさんの小さな面片に分けることを考えます。
各面片について
が成り立つので、それらを全部足し合わせます。
すると右辺は、極限で
になります。
では左辺はどうなるでしょうか。
3. 内部の辺が打ち消し合う
隣り合う 2 つの面片は、1 本の辺を共有しています。
その共有辺は、
- 一方の面片を正向きに回るときにはある向き
- 他方の面片を正向きに回るときには逆向き
でたどられます。
したがって、その共有辺に沿う線積分は、2 つを足すと打ち消し合います。
これは第 11 回の発散定理で、内部の面の寄与が打ち消し合ったのと同じ構造です。
こうして内部の辺は全部消え、最後に残るのは曲面全体の外周、つまり境界曲線
だけになります。
したがって左辺は
になります。
4. こうしてストークスの定理が出てくる
以上をまとめると、
- 各小片の循環は に近い
- それを全部足すと面積分になる
- 内部の共有辺の線積分は打ち消し合う
- 最後に境界曲線の線積分だけが残る
ので、
が自然に現れます。
これがストークスの定理の中身です。
5. ガウスの発散定理との類似
この見方は、発散定理と非常によく似ています。
発散定理では、
- 小さな箱での湧き出し量を足す
- 内部の面が打ち消し合う
- 最後に外側の境界面だけが残る
という構造でした。
ストークスの定理では、
- 小さな面片での循環を足す
- 内部の辺が打ち消し合う
- 最後に外側の境界曲線だけが残る
という構造になっています。
つまり
- 発散定理は 体積から面へ
- ストークスの定理は 面から線へ
という形で、同じ考え方が 1 次元下がったものだと見ることができます。
6. まとめ
重要なのは、
- 小さな面片では循環が に対応する
- 面全体を小片に分けて足すと、内部の共有辺は打ち消し合う
- 最後に境界曲線の線積分だけが残る
という点です。
この見方が入ると、ストークスの定理は突然現れる公式ではなく、局所的な回転を全部足した自然な結果として読めるようになります。