第 1 回では、ベクトルそのものを整理しました。
第 2 回では、内積と外積を使ってベクトルどうしの関係を見ました。
今回はその続きとして、
ベクトルを使って図形そのものを書く
という話に入ります。
ベクトル解析では、このあと曲線や曲面、ベクトル場を扱っていきます。
そのためにはまず、3 次元空間の中の基本的な図形である
を、ベクトルでどう表すかを押さえておく必要があります。
特に重要になるのは、
- 直線は「1 点と方向」で決まる
- 平面は「1 点と法線」で決まる
という見方です。
1. 今回学ぶこと
この記事では、次の内容を扱います。
- 直線のベクトル方程式
- 平面の方程式
- 法線ベクトル
- 点と平面の距離
ゴールは
3 次元空間の直線と平面を、ベクトルで記述し、位置や距離の問題に使えるようにすること
です。
2. 直感的なイメージ
まず、大まかな見方を先に置いておきます。
直線を決めるには、空間の中のある 1 点を通り、どの向きへ進むかが分かれば十分です。
つまり直線は
通る点 + 方向ベクトル
で決まります。
一方、平面は少し違います。
平面は広がりを持つので、どちら向きに立っている面かを指定する必要があります。
そのとき使うのが、平面に垂直なベクトル、つまり 法線ベクトル です。
つまり平面は
通る点 + 法線ベクトル
で決まります。
この 2 つの見方を持っておくと、
がすべて自然につながります。

3. 基本事項
3.1 直線のベクトル方程式
空間内の点
P0=(x0,y0,z0)
を通り、方向ベクトル
d=abc
をもつ直線を考えます。

図のように、基準点 P0 から方向ベクトル d の向きに進んだ先に、直線上の点 P があります。
t は、その方向にどれだけ進むかを表していると見ると、この式の意味がつかみやすくなります。
この直線上の点を P=(x,y,z) とすると、位置ベクトルは
OP=OP0+td(t∈R)
と表せます。
これを 直線のベクトル方程式 といいます。
つまり、基準点 OP0 から方向ベクトル d の実数倍だけ進くことで、直線上のすべての点が表せるわけです。
成分で書けば
xyz=x0y0z0+tabc
です。
したがって
x=x0+at,y=y0+bt,z=z0+ct
という 媒介変数表示 も得られます。
3.2 なぜこの式で直線になるのか
ここで
OP=OP0+td
という式がなぜ直線を表すのかを確認しておきます。
t を動かすと、点 P は d の向きに沿って前後に動きます。
- t=0 なら基準点 P0
- t>0 なら d の向きへ進む
- t<0 なら逆向きへ進む
ので、動く軌跡は 1 本の直線になります。
つまり媒介変数 t は、「どれだけ進むか」を表している量です。
3.3 平面の方程式
次に平面を考えます。
点
P0=(x0,y0,z0)
を通り、法線ベクトル
n=abc
をもつ平面を考えます。
平面上の任意の点を P=(x,y,z) とすると、ベクトル
P0P=x−x0y−y0z−z0
は平面内にあります。
一方、法線ベクトル n は平面に垂直です。
したがって
n⋅P0P=0
が成り立ちます。
これを成分で書くと
a(x−x0)+b(y−y0)+c(z−z0)=0
です。
これが 平面の方程式 です。
展開すれば
ax+by+cz+d=0
という形にもなります。
ここで
d=−(ax0+by0+cz0)
です。
3.4 法線ベクトルの意味
法線ベクトルは、平面の向きを決めるベクトルです。

図では、P0P は平面の上に寝ており、n はそこから垂直に立っています。
したがって、この 2 つが直交し、
n⋅P0P=0
になることが図形的にも分かります。
たとえば
n=001
なら、その平面は xy 平面に平行です。
なぜなら、このベクトルは z 軸方向を向いており、それに垂直な面は水平な平面になるからです。
逆に、
n=100
なら、その平面は yz 平面に平行です。
つまり法線ベクトルを見ると、平面がどちら向きに立っているかが分かります。
3.5 点と平面の距離

ここでは、点 Q=(x1,y1,z1) から平面
ax+by+cz+d=0
までの距離が、なぜこの図から求められるのかを考えます。
図のように、点 Q から平面へ垂線を下ろし、その足を H とすると、求めたい距離は QH の長さです。
この距離は
a2+b2+c2∣ax1+by1+cz1+d∣
で与えられます。
大事なのは
なぜこの式で図の QH が出るのか
を押さえることです。
まず、図の平面上にある 1 点を P0=(x0,y0,z0) とします。
すると
P0Q=x1−x0y1−y0z1−z0
というベクトルができます。
この P0Q は、図では P0 から Q へ斜めに伸びているベクトルです。
したがって、その長さ自体は距離ではありません。
距離として必要なのは、図で平面に垂直になっている QH の部分だけです。
言い換えると、P0Q のうち、法線ベクトル n の方向にどれだけ成分を持っているかだけを取り出せばよいことになります。
つまり、図の QH は
P0Q を法線ベクトル方向へ射影した長さ
になります。
3.6 距離公式の見方
いま見たように、図の QH は P0Q の法線方向成分です。
したがって、あとはその長さを式で表せば距離公式になります。
つまり、点 Q=(x1,y1,z1) から平面
ax+by+cz+d=0
までの距離は
a2+b2+c2∣ax1+by1+cz1+d∣
で与えられます。
平面
ax+by+cz+d=0
の法線ベクトルは
n=abc
です。
第 2 回で見たように、ベクトル P0Q の n 方向成分の大きさ、つまり図の QH の長さは
∥n∥∣n⋅P0Q∣
で与えられます。
したがって、点 Q と平面の距離は
∥n∥∣n⋅P0Q∣
です。
ここで
n=abc,P0Q=x1−x0y1−y0z1−z0
なので、内積を計算すると
n⋅P0Q=a(x1−x0)+b(y1−y0)+c(z1−z0)
です。
一方、平面上の点 P0 は
ax0+by0+cz0+d=0
を満たすので、
a(x1−x0)+b(y1−y0)+c(z1−z0)=ax1+by1+cz1+d
となります。
したがって距離は
a2+b2+c2∣ax1+by1+cz1+d∣
になります。
つまりこの公式の意味は、
- 分子: 点 Q の法線方向のずれ
- 分母: 法線ベクトルの長さ
であり、法線方向の成分を単位長さあたりに直している、ということです。
4. 例題
例題 1
点
P0=(1,2,−1)
を通り、方向ベクトル
d=2−13
をもつ直線の方程式を求めよ。
解答
直線のベクトル方程式は
OP=OP0+td
なので
xyz=12−1+t2−13
です。
したがって媒介変数表示は
x=1+2t,y=2−t,z=−1+3t
です。
例題 2
点
P0=(1,0,2)
を通り、法線ベクトル
n=2−11
をもつ平面の方程式を求めよ。
解答
平面の方程式は
a(x−x0)+b(y−y0)+c(z−z0)=0
なので
2(x−1)−1(y−0)+1(z−2)=0
です。
整理すると
2x−y+z−4=0
となります。
5. 練習問題
練習問題 1
点
P0=(2,−1,1)
を通り、方向ベクトル
d=13−2
をもつ直線の媒介変数表示を求めてください。
解答を見る
xyz=2−11+t13−2
なので
x=2+t,y=−1+3t,z=1−2t
です。
練習問題 2
点
P0=(1,2,0)
を通り、法線ベクトル
n=1−23
をもつ平面の方程式を求めてください。
解答を見る
1(x−1)−2(y−2)+3(z−0)=0
なので
x−2y+3z+3=0
です。
練習問題 3
平面
2x−y+2z−5=0
の法線ベクトルを 1 つ求めてください。
解答を見る
n=2−12
を取ればよいです。
練習問題 4
点
Q=(1,1,1)
から平面
x+2y+2z−6=0
までの距離を求めてください。
解答を見る
12+22+22∣1+2+2−6∣=31
です。
練習問題 5
なぜ平面の方程式
a(x−x0)+b(y−y0)+c(z−z0)=0
に内積が現れるのか、自分の言葉で説明してみてください。
解答を見る
平面内のベクトル P0P は、法線ベクトル n と直交しています。
直交条件は内積が 0 であることなので、
n⋅P0P=0
となり、それを成分で書いたものが平面の方程式です。
6. まとめ
直線と平面は、どちらもベクトルで自然に記述できます。
直線については、
- 1 点と方向ベクトルで決まる
- ベクトル方程式は OP=OP0+td
- 媒介変数表示に直せる
という点が重要でした。
平面については、
- 1 点と法線ベクトルで決まる
- 平面上のベクトルは法線ベクトルと直交する
- 方程式は a(x−x0)+b(y−y0)+c(z−z0)=0
という点が重要でした。
さらに、点と平面の距離は、
として理解できます。
ここまでで、ベクトルを使って 3 次元空間の基本図形を書く準備ができました。
次回は、その空間の中で点が動く様子を表すために、ベクトル値関数 を扱います。