第 1 回では、ベクトルを
空間の中の向きと大きさをもつ量
として整理しました。
今回はその続きとして、
2 つのベクトルの関係をどう測るか
を見ていきます。
ベクトルが 1 本だけなら、その大きさや向きだけを考えれば十分です。
しかしベクトル解析では、2 本のベクトルが
- どれくらい同じ向きを向いているか
- 直交しているか
- どれくらい広がりを作るか
- どちら向きに回っているか
を調べる場面が何度も出てきます。
そのための基本的な道具が、内積 と 外積 です。
1. 今回学ぶこと
この記事では、次の内容を扱います。
- 内積
- 内積の定義
- なす角
- 直交条件
- 外積
- 外積の定義
- 面積との関係
- 右ねじの法則
ゴールは
ベクトル同士の関係を、内積と外積によって計算し、意味と一緒に説明できるようにすること
です。
2. 直感的なイメージ
まず、大まかなイメージを先に置いておきます。
内積は、
2 つのベクトルがどれくらい同じ向きを向いているか
を見る量です。
向きがよくそろっていれば大きくなり、
直交していれば 0 になり、
逆向きに近ければ負になります。
一方で外積は、
2 つのベクトルがどれくらい面積を作るか、そしてその面に垂直な向きがどちらか
を見る量です。
つまり、
- 内積は「向きのそろい具合」
- 外積は「広がりと向き」
を測る道具だと思えばよいです。

3. 基本事項
3.1 内積の定義
3 次元ベクトル
a=a1a2a3,b=b1b2b3
に対して、内積 を
a⋅b=a1b1+a2b2+a3b3
で定めます。
2 次元なら
a=(a1a2),b=(b1b2)
に対して
a⋅b=a1b1+a2b2
です。
これは成分どうしを掛けて足しているだけです。
しかし、この量は単なる計算結果ではなく、あとで見るように角度の情報を持っています。
3.2 内積となす角

図では、a を b の方向へ落とした長さが ∥a∥cosθ になっています。
内積は、この「b 方向にどれだけ進んでいるか」を長さとして取り出している量だと見ることができます。
内積の最も重要な意味は、
a⋅b=∥a∥∥b∥cosθ
と書けることです。
ここで θ は、a と b のなす角です。
この式から、内積には次の意味があることがわかります。
- θ が小さいほど cosθ は大きいので、内積は大きくなる
- θ=2π のとき cosθ=0 なので、内積は 0 になる
- θ>2π なら cosθ<0 なので、内積は負になる
つまり内積は、「向きの一致度」を数として表しているわけです。
特に、a,b=0 なら
cosθ=∥a∥∥b∥a⋅b
なので、内積から角度も求められます。
3.3 直交条件
特に重要なのは、2 つのベクトルが直交する条件です。
a,b=0 に対して、
a⋅b=0
ならば
cosθ=0
なので
θ=2π
です。
したがって、
2 つのベクトルが直交することと、内積が 0 であることは同値
です。
これは計算上とても便利です。
直角かどうかを図で判断する代わりに、成分計算だけで確かめられるからです。
3.4 射影という見方
内積は、片方のベクトルをもう片方の方向にどれだけ落としたか、という見方でも理解できます。
たとえば b を固定すると、
∥a∥cosθ
は a の b 方向の成分です。
したがって
a⋅b=∥b∥×(a の b 方向成分)
と見ることもできます。
逆に言えば、a の b 方向成分は
∥b∥a⋅b
で求められます。
もちろん、向きまで含めた符号つきの量として見ているので、角度が鈍角ならこの値は負になります。
この見方は、あとで方向微分や線積分を考えるときに自然につながります。
3.5 外積の定義
外積は 3 次元で定義される演算です。
a=a1a2a3,b=b1b2b3
に対して、外積 a×b を
a×b=a2b3−a3b2a3b1−a1b3a1b2−a2b1
で定めます。
成分表示だけ見ると少し複雑ですが、意味ははっきりしています。
外積 a×b は
- a と b の両方に垂直
- 大きさは a と b が作る平行四辺形の面積
- 向きは右ねじの法則で決まる
というベクトルです。
3.6 外積の大きさと面積

図の平行四辺形で、底辺を ∥a∥、b から下ろした高さを ∥b∥sinθ と見れば、面積が
∥a∥∥b∥sinθ
になることがそのまま読み取れます。
外積の大きさは
∥a×b∥=∥a∥∥b∥sinθ
となります。
ここで θ は a と b のなす角です。
これはちょうど、2 本のベクトルが作る平行四辺形の面積になっています。
底辺を ∥a∥、高さを ∥b∥sinθ と見れば、
面積=∥a∥(∥b∥sinθ)=∥a×b∥
だからです。
したがって三角形の面積は
21∥a×b∥
で求められます。
3.7 右ねじの法則

図では、e1 から e2 へ回したときに、外積の向きが e3 になることを表しています。
つまり外積では、長さだけでなく「どちら向きに立つか」まで決まることが重要です。
外積は大きさだけでなく、向きも重要です。
a×b の向きは、
a から b へ右手の指を回したとき、親指の向く向きで決まります。
これを 右ねじの法則 といいます。
このため、外積は順番を入れ替えると符号が変わります。
b×a=−(a×b)
です。
つまり、内積は順番を入れ替えても同じですが、
a⋅b=b⋅a
外積は順番で向きが変わります。
a×b=b×a
です。
この違いはとても大事です。
4. 例題
例題 1
a=122,b=2−12
とする。
- a⋅b を求めよ
- a と b が直交するか判定せよ
解答
まず
a⋅b=1⋅2+2⋅(−1)+2⋅2=2−2+4=4
です。
したがって
a⋅b=0
なので、a と b は直交しません。
例題 2
a=100,b=010
とする。
- a×b を求めよ
- ∥a×b∥ を求めよ
解答
成分公式から
a×b=001
です。
したがって
∥a×b∥=1
です。
実際、a と b は長さ 1 の直交ベクトルなので、作る平行四辺形は 1 辺 1 の長方形で、面積は 1 です。
5. 練習問題
練習問題 1
a=(21),b=(13)
の内積を求めてください。
解答を見る
a⋅b=2⋅1+1⋅3=5
です。
練習問題 2
a=12−1,b=2−10
が直交するか判定してください。
解答を見る
a⋅b=1⋅2+2⋅(−1)+(−1)⋅0=0
なので、2 つのベクトルは直交します。
練習問題 3
a=100,b=002
の外積を求めてください。
解答を見る
a×b=0−20
です。
練習問題 4
a=200,b=030
が作る平行四辺形の面積を求めてください。
解答を見る
∥a×b∥=6
なので、面積は 6 です。
練習問題 5
なぜ平行な 2 本のベクトルの外積は 0 になるのか、∥a×b∥=∥a∥∥b∥sinθ を使って説明してください。
解答を見る
平行なら θ=0 または θ=π です。
したがって
sinθ=0
なので
∥a×b∥=∥a∥∥b∥sinθ=0
です。
長さが 0 のベクトルは零ベクトルなので、
a×b=0
となります。
6. まとめ
内積と外積は、どちらも 2 本のベクトルの関係を調べるための基本的な道具です。
内積については、
- 成分どうしを掛けて足す
- a⋅b=∥a∥∥b∥cosθ
- 直交条件は a⋅b=0
という点が重要でした。
外積については、
- 3 次元で定義される
- a×b は 2 つのベクトルに垂直
- ∥a×b∥=∥a∥∥b∥sinθ
- その大きさは平行四辺形の面積になる
- 向きは右ねじの法則で決まる
という点が重要でした。
ベクトル解析では、このあと曲線の接ベクトル、曲面の法線ベクトル、線積分、面積分などが出てきます。
そのたびに
- 内積で向きの成分を取り出す
- 外積で面積や法線方向を作る
という考え方を使います。
次回は、ベクトルをさらに空間の中で使うために、直線と平面の方程式 を扱います。
位置ベクトルや法線ベクトルが、具体的にどのように図形を記述するかを見ていきます。