オイラーの公式はなぜ成り立つのか

基礎

数学には、短い式の中に、いろいろな考え方がつながっている公式があります。

その代表の1つが、数学でもとても有名な オイラーの公式 です。

eix=cos⁡x+isin⁡xe^{ix}=\cos x+i\sin x

実は、筆者が一番好きな公式でもあります。

一見すると別々のものに見える指数関数と三角関数が、複素数を通して1つの式でつながる。 このつながりのきれいさが、好きなところです。

しかも、この公式は見た目がきれいなだけでなく、回転や波を表したり、電気回路や信号を扱ったりするときにも役立ちます。 数学の中でも、その応用でも、いろいろな場面で顔を出す公式です。

この関係は、すべての実数 xx に対して成り立ちます。

ただ、式を見ただけでは、

どうして指数関数から cos や sin が出てくるのか

は、なかなか見えてきません。

その理由を知るために使うのが、テイラー展開 です。 指数関数をべきの足し算で表して整理すると、その中に cos と sin の展開式が現れます。

この記事では、まず指数関数を複素数まで広げ、展開式を使ってオイラーの公式を導きます。 そのあとで、この公式が円の上の回転とどうつながるのかを見ていきます。

1. 指数関数を複素数まで広げる

まず、実数 xx に対して成り立つ、次のマクローリン展開を考えます。

ex=1+x+x22!+x33!+x44!+⋯e^x=1+x+\frac{x^2}{2!}+\frac{x^3}{3!}+\frac{x^4}{4!}+\cdots

今回は、この式を出発点にします。 展開の考え方や係数の決まり方を確認したい場合は、こちらに寄り道してみてください。

寄り道

右辺にあるのは、べき乗と足し算です。 これらの計算は、複素数に対してもできます。

そこで、

この展開式を使って、指数関数を複素数まで広げられないか

と考えます。

実数の $x$ についての式に、いきなり $ix$ を入れてもいいんですか? そこが大切です。実数で成り立つ式なら何でも虚数を代入できる、というわけではありません。今回は、この足し算の式を使って、複素数の指数関数を定義します。

複素数 zz に対して、

ez=1+z+z22!+z33!+⋯e^z=1+z+\frac{z^2}{2!}+\frac{z^3}{3!}+\cdots

と定義します。

この右辺は、どの複素数 zz でも一定の値に近づきます。1 また、zz が実数なら、先ほどの exe^x と一致します。

複素数の計算を確認したい場合は、こちらで整理しています。

寄り道

2. 展開式からオイラーの公式を導く

複素数の指数関数を定義できたので、eixe^{ix} を計算してみましょう。 展開式を整理し、三角関数の展開式と見比べます。

2.1 eixe^{ix} を展開して整理する

ここで、xx を実数として z=ixz=ix とすると、

eix=1+ix+(ix)22!+(ix)33!+(ix)44!+⋯e^{ix} =1+ix+\frac{(ix)^2}{2!} +\frac{(ix)^3}{3!} +\frac{(ix)^4}{4!}+\cdots

となります。

i2=−1i^2=-1、i3=−ii^3=-i、i4=1i^4=1 を使って、各項を整理します。

すると、

eix=1+ix−x22!−ix33!+x44!+ix55!−x66!−ix77!+⋯e^{ix} =1+ix-\frac{x^2}{2!} -i\frac{x^3}{3!} +\frac{x^4}{4!} +i\frac{x^5}{5!} -\frac{x^6}{6!} -i\frac{x^7}{7!}+\cdots

です。

少し長い式ですが、ii が付いていない項と、付いている項 に分けてみましょう。

eix=(1−x22!+x44!−x66!+⋯ )+i(x−x33!+x55!−x77!+⋯ )\begin{aligned} e^{ix} &=\left(1-\frac{x^2}{2!}+\frac{x^4}{4!}-\frac{x^6}{6!}+\cdots\right)\\ &\quad+i\left(x-\frac{x^3}{3!}+\frac{x^5}{5!}-\frac{x^7}{7!}+\cdots\right) \end{aligned}

無限の足し算では、いつでも自由に項をまとめ直せるわけではありません。 ただし、今回の級数は 絶対収束 という性質を持つので、このように分けても和は変わりません。1

ここまでで、2つのかっこの中に、違う数の並びが現れました。

2.2 cos と sin の展開式と見比べる

同じように、三角関数をマクローリン展開すると、次の式になります。

cos⁡x=1−x22!+x44!−x66!+⋯\cos x =1-\frac{x^2}{2!}+\frac{x^4}{4!}-\frac{x^6}{6!}+\cdots sin⁡x=x−x33!+x55!−x77!+⋯\sin x =x-\frac{x^3}{3!}+\frac{x^5}{5!}-\frac{x^7}{7!}+\cdots

これらも、すべての実数 xx について成り立ちます。 どちらも、テイラー展開の記事で微分から係数を求めた展開式です。

先ほどの2つのかっこと見比べると、

  • ii が付いていない部分は cos⁡x\cos x
  • ii をくくり出した残りの部分は sin⁡x\sin x

に、そのまま一致しています。

したがって

eix=cos⁡x+isin⁡x\boxed{e^{ix}=\cos x+i\sin x}

となります。

これが、オイラーの公式が成り立つ理由です。

指数の式の中に、本当に cos と sin の並びが入っていたんですね。 そうです。$i$ の累乗が $1,i,-1,-i$ とくり返すことで、偶数乗の項と奇数乗の項に、それぞれ cos と sin の符号の並びが現れます。

3. オイラーの公式を図形として見る

ここまでは、xx を実数の変数として、展開式を計算してきました。 今度は、得られた公式を単位円と結びつけてみます。

右辺 cos⁡x+isin⁡x\cos x+i\sin x を、平面上の点として見てみます。 複素数 a+bia+bi を点 (a,b)(a,b) に対応させると、これは

(cos⁡x,sin⁡x)(\cos x,\sin x)

という点です。

三角関数の記事では、この座標が単位円の上の位置を表していました。 単位円との対応を確認したい場合は、こちらに寄り道してみてください。

寄り道

単位円上の点の横の座標が cos、縦の座標が sin になる図

この図の横の座標を実数の部分、縦の座標を ii の係数として読みます。

つまり、オイラーの公式は

eixe^{ix} は、1 の位置から角度 xx だけ回った単位円上の点を表す

と読むことができます。ここで回転の角度はラジアンで考えます。 xx が増えると反時計回りに進み、xx が 2π2\pi 増えると同じ位置に戻ります。

xx に具体的な値を入れると、次のようになります。

xxeixe^{ix}円の上の位置
0011右
π2\dfrac{\pi}{2}ii上
π\pi−1-1左
3π2\dfrac{3\pi}{2}−i-i下
2π2\pi11右に戻る

ここまでは半径が 1 の円でしたが、原点からの距離が rr の点ならどうでしょうか。

単位円上の点を rr 倍すればよいので、その点を表す複素数は

z=r(cos⁡x+isin⁡x)=reixz=r(\cos x+i\sin x)=re^{ix}

と書けます。このように、複素数を 原点からの距離と向きで表す書き方 を 極形式 と呼びます。

a+bia+bi が「横にどれだけ、縦にどれだけ」で表す書き方なら、reixre^{ix} は「どの向きに、どれだけ離れているか」で表す書き方です。 オイラーの公式を使うと、この距離と向きをひとまとまりの式で表せます。

4. オイラーの等式

オイラーの公式に x=πx=\pi を入れてみます。

eiπ=cos⁡π+isin⁡πe^{i\pi}=\cos\pi+i\sin\pi

単位円での値を使うと、

cos⁡π=−1,sin⁡π=0\cos\pi=-1,\quad \sin\pi=0

です。

したがって

eiπ=−1e^{i\pi}=-1

となり、両辺に 1 を足すと

eiπ+1=0\boxed{e^{i\pi}+1=0}

を得ます。これを オイラーの等式 と呼びます。

e,i,π,1,0e,i,\pi,1,0 という数が1つの式に集まるので、不思議に見えるかもしれません。

でも、円の上で考えると、

1 の位置から半周すると、−1-1 に着く

ということを表しています。

まとめ

オイラーの公式は、実数 xx に対して成り立つ

eix=cos⁡x+isin⁡xe^{ix}=\cos x+i\sin x

という関係です。

成り立つ理由をたどると、

  • 指数関数の展開式を使って、複素数の指数関数を定義する
  • eixe^{ix} を展開し、ii の累乗を計算する
  • 実数の部分と ii の付く部分に分ける
  • それぞれが cos⁡x\cos x と sin⁡x\sin x の展開式に一致する

という流れでした。

つまり、

指数関数を複素数まで広げると、その展開式の中に三角関数が現れる

ということです。

さらに、右辺を平面上の点として見ると、eixe^{ix} は単位円上の位置を表します。 そして x=πx=\pi を代入すると、オイラーの等式

eiπ+1=0e^{i\pi}+1=0

が得られます。

展開式を通して見ることで、指数関数と三角関数、そして円の上の動きがどうつながるのかが見えてきます。

Footnotes

  1. 【無限の足し算は本当に値が決まるのか】eze^z の展開で、各項の大きさは ∣z∣n/n!|z|^n/n! です。ここで ∣z∣|z| は、複素数平面で原点から zz までの距離を表します。z≠0z\ne0 のとき、次の項の大きさを今の項の大きさで割ると ∣z∣/(n+1)|z|/(n+1) となります。zz を固定して nn を大きくすれば、この比は 1/21/2 以下になります。したがって、あるところから先の項は、半分、さらに半分という速さ以上に小さくなり、大きさを全部足しても有限の値に収まります。z=0z=0 の場合は最初から和が 1 です。このように各項の大きさの和が収束することを「絶対収束」と呼びます。今回の級数で項をまとめ直せるのは、この性質があるためです。 ↩ ↩2

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