数学では、複雑な関数をもっと扱いやすい形で見たいことがあります。
そのとき重要になるのが テイラー展開 です。
テイラー展開とは一言で言うと
関数を多項式の形で表す考え方
です。
たとえば ex や sinx のような関数は、ある条件のもとで
a0+a1x+a2x2+a3x3+⋯
のような形で表すことができます。
そして、このときそれぞれの係数は、実は微分によって決まります。
この記事では、まず x=0 のまわりで考える マクローリン展開 を具体例から見て、
そのあとで一般の テイラー展開 に進みます。
微分や極限の考え方にまだ慣れていない場合は、先にこちらを読んでみてください。
寄り道
寄り道
1. まずは具体例として ex を考える
まず、関数 ex が
ex=a0+a1x+a2x2+a3x3+⋯
のような多項式の形で表せるとします。
では、a0,a1,a2,… はどう決まるのでしょうか。
ここで大事なのは、
係数を知りたければ、うまく項を消して取り出せばよい
ということです。
そのための道具として、微分が使えます。
1.1 x=0 を代入すると定数項がわかる
まず上の式に x=0 を代入すると
e0=a0
となります。
e0=1 なので
a0=1
です。
つまり定数項は 1 だとわかります。
1.2 微分すると次の係数がわかる
次に両辺を微分します。
ex=a1+2a2x+3a3x2+4a4x3+⋯
ここでまた x=0 を代入すると
e0=a1
なので
a1=1
です。
さらにもう1回微分すると
ex=2a2+3⋅2a3x+4⋅3a4x2+⋯
となります。
ここで x=0 を代入すると
e0=2a2
なので
a2=21
です。
同じことを続けると
a3=3!1,a4=4!1,…
となります。
したがって
ex=1+x+2!x2+3!x3+4!x4+⋯
となります。
これが ex の マクローリン展開 です。
なるほど、微分して $x=0$ を代入していくと、係数が順番に決まっていくんですね。
その通りです。マクローリン展開は、関数を多項式で表せるとしたら係数は何になるかを、微分を使って決めているわけです。
2. 一般の関数でも同じことをする
今度は ex に限らず、ある関数 f(x) が
f(x)=a0+a1x+a2x2+a3x3+⋯
と表せるとします。
このとき、先ほどと同じように考えると
まず x=0 を代入して
f(0)=a0
です。
次に1回微分すると
f′(x)=a1+2a2x+3a3x2+⋯
なので
f′(0)=a1
です。
さらに2回微分すると
f′′(0)=2!a2
となるので
a2=2!f′′(0)
です。
同じことを続ければ
an=n!f(n)(0)
となります。
したがって
f(x)=f(0)+f′(0)x+2!f′′(0)x2+3!f(3)(0)x3+⋯
となります。
これが マクローリン展開 の一般形です。
2.1 なぜ n! が出てくるのか
ここで
n!f(n)(0)
の n! が不思議に見えるかもしれません。
これは、xn を n 回微分すると
n!
が前に出てくるからです。
たとえば
a3x3
を3回微分すると
6a3=3!a3
になります。
つまり、n 回微分したときに係数をちょうど取り出すためには、そのぶんの n! で割る必要があるわけです。
3. sinx でもやってみる
次は sinx を考えてみます。
sinx が
sinx=a0+a1x+a2x2+a3x3+⋯
と表せるとします。
ここで、sinx を順に微分すると
sinx,cosx,−sinx,−cosx,sinx,…
と周期的にくり返します。
そこで x=0 を代入していくと
- sin0=0
- cos0=1
- −sin0=0
- −cos0=−1
となるので
a0=0,a1=1,a2=0,a3=−3!1,…
がわかります。
したがって
sinx=x−3!x3+5!x5−7!x7+⋯
となります。
偶数次の項が消えて、奇数次の項だけが残るのも特徴です。
三角関数そのものの意味を先に整理したい場合は、こちらもおすすめです。
寄り道
4. x=0 以外の点で考えるとテイラー展開になる
ここまでは x=0 のまわりで展開してきました。
では、0 ではなく x=a のまわりで同じことをしたらどうなるでしょうか。
このときは
f(x)=b0+b1(x−a)+b2(x−a)2+b3(x−a)3+⋯
のように、(x−a) のべきで表すことを考えます。
そして先ほどと同じように
- x=a を代入する
- 微分してから x=a を代入する
- さらに微分して x=a を代入する
という手順を進めると
bn=n!f(n)(a)
となります。
したがって
f(x)=f(a)+f′(a)(x−a)+2!f′′(a)(x−a)2+3!f(3)(a)(x−a)3+⋯
を得ます。
これが テイラー展開 です。
つまり
- x=0 のまわりで展開したものが マクローリン展開
- 一般の x=a のまわりで展開したものが テイラー展開
という関係になっています。
5. いつでもこの形で表せるのか
ここで注意したいのは、
微分できる関数なら何でも、そのままテイラー展開と一致するとは限らない
ということです。
テイラー展開の形は作れても、元の関数と本当に一致するためには、もう少し条件が必要です。
この記事では細かい説明には立ち入りませんが、
各階微分可能で、しかもテイラー級数がもとの関数に収束する場合には、関数を多項式の形で表せる
という条件が必要です。
6. 多項式で表せると近似にも使える
ここまでの主役は、あくまで
関数を多項式の形で表すこと
でした。
そして、多項式の形で表せると、その途中までを使って
ex≈1+x+2!x2
のような 近似 もできるようになります。
実際にグラフで見ると、ex と
1+x+2x2
は x=0 の近くでかなりよく重なっています。
ただし、x=0 から離れるほど少しずつズレていきます。
さらに、近似の次数を上げて
1+x+2x2+3!x3+4!x4
まで使うと、x=0 の近くではもっと強く重なることがわかります。
このように、
ある点の近くでは元の関数をよく表し、離れると誤差が目立ってくる
というのが、テイラー展開を近似に使うときの基本的な見方です。
つまり近似は本体ではなく、
多項式で表せることから生まれる応用
だということです。
まとめ
テイラー展開とは
関数をある点のまわりで多項式の形に表す考え方
です。
流れをまとめると、
- まず関数がべきの形で表せると考える
- 係数を知るために微分する
- ある点を代入して係数を順番に決める
- その結果としてテイラー展開の式が得られる
ということでした。
特に x=0 のまわりで行うものが マクローリン展開 であり、
一般の x=a のまわりで行うものが テイラー展開 です。
公式として書けば、マクローリン展開は
f(x)=f(0)+f′(0)x+2!f′′(0)x2+3!f(3)(0)x3+⋯
であり、
f(x)=n=0∑∞n!f(n)(0)xn
とも書けます。
また、一般のテイラー展開は
f(x)=f(a)+f′(a)(x−a)+2!f′′(a)(x−a)2+3!f(3)(a)(x−a)3+⋯
であり、
f(x)=n=0∑∞n!f(n)(a)(x−a)n
とも書けます。
公式だけを覚えるより、
なぜその係数になるのか
を見ておくと、式の意味がかなりはっきりしてきます。