sinx/x の極限

基礎

三角関数の微分では

lim⁡x→0sin⁡xx=1\lim_{x\to0}\frac{\sin x}{x}=1

という極限が様々なところで出てきます。

この記事では、

  • なぜこの極限が特別なのか
  • どうやって 1 をはさみうちで示すのか
  • それが三角関数の微分とどうつながるのか

を順に見ていきます。

使うのは 単位円の図形 です。

極限そのものにまだ慣れていない場合は、先にこちらを読むと入りやすいです。

寄り道

また、sin や cos を単位円で見る話がまだ曖昧なら、こちらも先に見てください。

寄り道

1. グラフで見ると何が起きているか

まず

y=sin⁡xxy=\frac{\sin x}{x}

のグラフを見てみます。

x=0x=0 ではそのまま代入できませんが、 xx を 0 に近づけていくと、値は 1 に近づいていくように見えます。

つまりグラフとしては、

原点の真上に穴が空いているが、その穴の高さは 1 に見える

という形です。

ただし、グラフがそう見えるだけでは証明にはなりません。

なぜ本当に 1 に近づくと言えるのかを、 次で図形的に示します。

2. 証明

この証明では、

単位円の中で面積を比べて、sin⁡xx\dfrac{\sin x}{x} を 1 にはさみうちで示す

という流れを使います。

また、この議論は

角度をラジアンで表したとき

に成り立ちます。

単位円では、角度 xx はそのまま弧の長さにもなるので、 扇形の面積をそのまま xx で表せるからです。

2.1 3 つの図形の大小関係を見る

半径 1 の単位円を考えます。

そして

0<x<π20<x<\frac{\pi}{2}

とします。

このとき、単位円の中には

  • 三角形 OAPOAP
  • 扇形 OAPOAP
  • 三角形 OATOAT

という 3 つの図形ができます。

単位円の中で三角形・扇形・接線側の三角形を比較する図

図形的には、

三角形 OAPOAP の面積 < 扇形 OAPOAP の面積 < 三角形 OATOAT の面積

です。

この大小関係を式に直すのが出発点です。

2.2 3 つの図形の面積を書く

まず、三角形 OAPOAP を考えます。

単位円なので、円周上の点の座標は

(cos⁡x,sin⁡x)(\cos x,\sin x)

です。

図のとおり、OA=1OA=1 で、PP の座標は

(cos⁡x,sin⁡x)(\cos x,\sin x)

です。

したがって、底辺 OHOH は cos⁡x\cos x、高さ PHPH は sin⁡x\sin x なので、三角形 OAPOAP の面積は

12sin⁡xcos⁡x\frac{1}{2}\sin x\cos x

です。

次に、扇形 OAPOAP を考えると、その面積は

x2\frac{x}{2}

です。

ここで角度をラジアンで書いていることが効いています。 半径 1 なので、扇形の面積がそのまま x/2x/2 になります。

最後に、接線上の点 TT を使った三角形 OATOAT を考えると、その面積は

12tan⁡x\frac{1}{2}\tan x

になります。

したがって、 面積の大小関係から

12sin⁡xcos⁡x<x2<12tan⁡x\frac{1}{2}\sin x\cos x < \frac{x}{2} < \frac{1}{2}\tan x

となります。

両辺を 2 倍すると

sin⁡xcos⁡x<x<tan⁡x\sin x\cos x < x < \tan x

です。

ここまでは、単位円の図形から出てきた不等式です。

2.3 sin⁡xx\dfrac{\sin x}{x} をはさむ形に変える

今は

0<x<π20<x<\frac{\pi}{2}

なので、sin⁡x\sin x は正です。

そこで不等式

sin⁡xcos⁡x<x<tan⁡x\sin x\cos x < x < \tan x

を sin⁡x\sin x で割ると

cos⁡x<xsin⁡x<1cos⁡x\cos x < \frac{x}{\sin x} < \frac{1}{\cos x}

となります。

さらに逆数を取ると

cos⁡x<sin⁡xx<1\cos x < \frac{\sin x}{x} < 1

が得られます。

2.4 はさみうちで右側極限を求める

ここで

x→0+x\to0^+

のとき、

cos⁡x→1\cos x \to 1

です。

しかも

cos⁡x<sin⁡xx<1\cos x < \frac{\sin x}{x} < 1

でした。

左も右も 1 に近づくので、 その間にはさまれている

sin⁡xx\frac{\sin x}{x}

も 1 に近づきます。

したがって

lim⁡x→0+sin⁡xx=1\lim_{x\to0^+}\frac{\sin x}{x}=1

です。

ただ、これだけでは右から近づいた場合しか扱っていません。

2.5 左から近づく場合も確認する

では x<0x<0 のときはどうなるでしょうか。

sin は奇関数なので

sin⁡(−x)=−sin⁡x\sin(-x)=-\sin x

です。

したがって

sin⁡(−x)−x=sin⁡xx\frac{\sin(-x)}{-x}=\frac{\sin x}{x}

となり、

sin⁡xx\frac{\sin x}{x}

は左右対称な形になります。

つまり、左から近づいても右から近づいても同じ値になり、

lim⁡x→0sin⁡xx=1\lim_{x\to0}\frac{\sin x}{x}=1

です。

3. なぜこの極限が重要なのか

ここまでで

lim⁡x→0sin⁡xx=1\lim_{x\to0}\frac{\sin x}{x}=1

が示せました。

この結果は、そのまま三角関数の微分に使われます。

例えば sin⁡x\sin x の微分では、 加法定理を使うと

sin⁡(x+h)−sin⁡xh=sin⁡xcos⁡h−1h+cos⁡xsin⁡hh\frac{\sin(x+h)-\sin x}{h} = \sin x\frac{\cos h-1}{h} + \cos x\frac{\sin h}{h}

となります。

ここで

sin⁡hh→1\frac{\sin h}{h}\to1

が分かっていれば、 残るのは

cos⁡h−1h→0\frac{\cos h-1}{h}\to0

だけです。

すると

(sin⁡x)′=cos⁡x(\sin x)'=\cos x

が導けます。

つまり、

sin⁡xx→1\dfrac{\sin x}{x}\to1 は、三角関数の微分を支える中心の極限

だということです。

4. もう 1 つの極限

三角関数の微分では、もう 1 つ

lim⁡x→0cos⁡x−1x=0\lim_{x\to0}\frac{\cos x - 1}{x}=0

もよく使います。

これは

1−cos⁡x=(1−cos⁡x)(1+cos⁡x)1+cos⁡x=1−cos⁡2x1+cos⁡x=sin⁡2x1+cos⁡x1-\cos x = \frac{(1-\cos x)(1+\cos x)}{1+\cos x} = \frac{1-\cos^2 x}{1+\cos x} = \frac{\sin^2 x}{1+\cos x}

より

1−cos⁡xx=sin⁡xx⋅sin⁡x1+cos⁡x\frac{1-\cos x}{x} = \frac{\sin x}{x}\cdot\frac{\sin x}{1+\cos x}

と書けます。

ここで

  • sin⁡xx→1\dfrac{\sin x}{x}\to1
  • sin⁡x→0\sin x\to0
  • 1+cos⁡x→21+\cos x\to2

なので

1−cos⁡xx→0\frac{1-\cos x}{x}\to 0

です。

したがって

cos⁡x−1x→0\frac{\cos x - 1}{x}\to 0

も分かります。

まとめ

lim⁡x→0sin⁡xx=1\lim_{x\to0}\frac{\sin x}{x}=1

が成り立つ理由は、

単位円の中で、三角形と扇形と接線側の三角形の面積を比べると、sin⁡xx\frac{\sin x}{x} が 1 にはさまれるから

です。

流れをまとめると、

  • 単位円で sin⁡xcos⁡x<x<tan⁡x\sin x\cos x < x < \tan x を作る
  • そこから cos⁡x<sin⁡xx<1\cos x < \dfrac{\sin x}{x} < 1 を得る
  • x→0x\to0 で cos⁡x→1\cos x\to1 を使って、はさみうちで 1 と分かる

という形です。

この極限は、ただの暗記事項ではありません。 単位円の図形から自然に出てきて、そのまま三角関数の微分の基礎になります。

三角関数の微分そのものを定義から追いたい場合は、こちらも続けて読むとつながります。

寄り道

ひろ アイコン ひろ