高校数学の数列において、多くの受験生が苦手意識を持つ「漸化式」。
問題の形が多すぎて、どれをどう変形すればいいのか全然覚えられません……。
安心してください。一見すると複雑でバラバラに見える漸化式も、実は「なぜその操作をするのか」という理由を理解すれば、暗記に頼る必要はなくなります。すべては**3つの基本形**のいずれかに帰着させるために式変形を行っているのです。
本記事では、大学受験に必要な漸化式を全15パターンに完全分類し、それぞれの解法の本質と、一切の計算を省略しない超丁寧な例題解説をお届けします。
まずはテスト前の見直しにも使える、全15パターンの全体地図となる早見表から確認していきましょう。
漸化式 全15パターン早見表
| グループ | No. | パターン名 | 式の形 | 解法の最初の一手 |
|---|
| A: 基本 | 1 | 等差型 | an+1=an+d | 公式 an=a1+(n−1)d |
| 2 | 等比型 | an+1=ran | 公式 an=a1rn−1 |
| 3 | 階差型 | an+1=an+f(n) | 公式 an=a1+∑f(k) |
| B: 階比 | 4 | 階比型 | an+1=f(n)an | 縦に並べて掛け合わせ、ナナメに約分 |
| C: 特性 | 5 | 特性方程式型 | an+1=pan+q | α=pα+q を解いて引く |
| D: ズラす | 6 | 多項式型(1次) | an+1=pan+qn+r | n→n+1 にズラした式と引く |
| 7 | 和 Sn 混在型 | Sn=pan+q | n→n+1 にズラした式と引く |
| E: 割る | 8 | 指数型 | an+1=pan+qn | 両辺を qn+1 で割る (次記事で解説) |
| 9 | 分数係数型 | an+1=f(n)f(n+1)an | 両辺を f(n+1) で割る (次記事で解説) |
| 10 | クロス係数型 | f(n)an+1=f(n+1)an+q | 両辺を f(n)f(n+1) で割る (次記事で解説) |
| F: 置換 | 11 | 累乗・対数型 | an+1=panq | 両辺の log をとる (次記事で解説) |
| 12 | 基本分数型 | an+1=pan+qran | 両辺の「逆数」をとる (次記事で解説) |
| 13 | 1次分数型 | an+1=pan+qran+s | 特性方程式を解いてから逆数をとる (次記事で解説) |
| G: 連立 | 14 | 隣接3項間型 | an+2+pan+1+qan=0 | x2+px+q=0 を解く (次記事で解説) |
| 15 | 連立漸化式 | an+1=pan+qbn | 足し引き or 代入して隣接3項間へ (次記事で解説) |
【グループA】公式に当てはめるだけの「基本3型」
すべての漸化式の土台となる最も重要な3つのパターンです。応用パターンはすべて、この3つのいずれかに変形することを目指します。まずは「この形を見たら、この公式を適用する」というルールを完璧に覚えましょう。
1. 等差型: an+1=an+d
■ 覚えるべき公式
an=a1+(n−1)d(初項:a1、公差:d)
■ 見分け方のポイント
前の項 an に、いつも同じ**定数(数字)**を足すと次の項になる形です。
an+1=an+3 のように、an の後ろにくっついているのが「ただの数字」であれば等差型です。
■ 【例題】
a1=2,an+1=an+3
■ 【解法ステップ】
STEP 1:初項と公差を確認する
与えられた式から、初項 a1=2、公差 d=3 であることが分かります。
STEP 2:公式に代入して計算する
an=a1+(n−1)d=2+(n−1)⋅3=2+3n−3=3n−1
【答え】 an=3n−1
2. 等比型: an+1=ran
■ 覚えるべき公式
an=a1rn−1(初項:a1、公比:r)
■ 見分け方のポイント
前の項 an に、いつも同じ**定数(数字)**を掛け算すると次の項になる形です。
an+1=2an のように、an の前に数字が掛けられており、後ろには何も足されていないことを確認してください。
■ 【例題】
a1=3,an+1=2an
■ 【解法ステップ】
STEP 1:初項と公比を確認する
与えられた式から、初項 a1=3、公比 r=2 であることが分かります。
STEP 2:公式に代入する
an=a1rn−1=3⋅2n−1
【答え】 an=3⋅2n−1
⚠️ 注意ポイント
3⋅2n−1 を計算して 6n−1 とまとめてしまうのはよくある間違いです!指数がついている 2 と、ただの数字の 3 は掛け算できません。この形のまま答えにしましょう。
3. 階差型: an+1=an+f(n)
■ 覚えるべき公式
an=a1+k=1∑n−1f(k)(※ n≥2 のとき)
■ 見分け方のポイント
等差型と似ていますが、足されているものが定数ではなく、2n や n2 のような n を含む式 になっているのが特徴です。
■ 【例題】
a1=1,an+1=an+2n
■ 【解法ステップ】
足されている部分が 2n という「n の式」なので、階差数列の公式を使います。シグマの上端が n−1 になるため、必ず「n≥2 のとき」という条件分けからスタートします。
STEP 1: n≥2 のときの一般項を計算する
公式に初項 a1=1、 f(k)=2k を代入します。(※ f(n) の n を k に変えるのを忘れずに!)
an=1+k=1∑n−12k=1+2⋅{21(n−1)n}=1+n(n−1)=n2−n+1
STEP 2: n=1 のときも成り立つか確認する
STEP 1 で求めた式 an=n2−n+1 に n=1 を代入して検算します。
a1=12−1+1=1
問題文で与えられた初項 a1=1 と完全に一致しました。これで、この式は n=1 のときも正しいことが証明されました。
【答え】 an=n2−n+1(n≥1 で成立)
💡なぜ n≥2 が必要なのか
公式にある ∑k=1n−1 は「k=1 から n−1 まで足す」という意味だからです。もし n=1 だと「k=1 から 0 まで足す」という存在しない無意味な計算になってしまうため、必ず最初に条件を分けて安全な形にしてから計算を進めます。
【グループB】縦に並べて一気に消す「階比型」
ここからは、基本3型に持ち込むための「式変形」のテクニックに入ります。
まずは等比型に似ているけれど、掛けられるものが一定ではないパターンです。
4. 階比型: an+1=f(n)an
■ 見分け方のポイント
前の項 an に、いつもと違う 「n を含む式」 が掛け算されている形です。
an+1=nn+2an のように、an の前に分数や n の多項式が掛けられていたら階比型と判断します。
■ 解法
このパターンには直接当てはめられる公式がありません。代わりに、**「分数をたくさん書き出して、すべて掛け合わせる」**というダイナミックな方法で解いていきます。具体的な手順は以下の3ステップです。
- 分数の形を作る:まず両辺を an で割り、左辺を anan+1 という分数比の形にします。
- 1 から n−1 まで代入してすべて掛ける:式の n の部分に 1,2,3,…,n−1 を順番に入れた分数を書き出し、左辺どうし、右辺どうしを一気に掛け合わせます。
- ナナメに約分する:左辺は分母と分子がナナメに次々と約分されて消え、a1an だけが綺麗に残ります。右辺も規則的に約分されるので、最後に残ったものを計算して an を導き出します。
■ 【例題】
a1=1,an+1=nn+2an
■ 【解法ステップ】
STEP 1:割って形を作る
まずは両辺を an で割り、分数比の形を作ります。
anan+1=nn+2
STEP 2:代入してすべて掛ける
この式の n に 1,2,…,n−1 を順番に代入したものを、左辺どうし・右辺どうしですべて掛け合わせます。
a1a2⋅a2a3⋅a3a4⋯an−1an=13⋅24⋅35⋯n−1n+1
STEP 3:約分して整理する
左辺はナナメに次々と約分され、最初の分母 a1 と最後の分子 an だけが残ります。
右辺も「分子と、2つ後ろの分母」が消える規則性に従って約分します。
a1an=1⋅2n(n+1)
初項 a1=1 を代入して an を求めます。
1an=2n(n+1)⟹an=2n(n+1)
【答え】 an=2n(n+1)
💡 なぜこれで解けるのか
階差数列が「足し算の繰り返し(Σ)」で間を相殺したのに対し、階比型は**「掛け算の繰り返し」で間を約分して消す**というアプローチです。anan+1 の形を意図的に作ることで、掛け合わせたときに分母と分子がドミノ倒しのように連鎖して消え、最初と最後だけが綺麗に残る性質を利用しています。
⚠️ 注意ポイント
右辺の約分で最後になにが残るか数え間違えるミスが多発します!迷ったときは**「前で生き残った数」と「後ろで生き残る数」の個数は必ず同じになる**というルールを思い出してください。今回、前の方で分母が2つ(1 と 2)残ったので、後ろの方でも必ず分子が2つ(n と n+1)残ります。前後の個数チェックを必ず行いましょう。
【グループC】定数を消去する「特性方程式型」
ここからは、受験漸化式の中で最も出題頻度が高く、すべての応用パターンの基礎となる最大の山場です。
5. 特性方程式型: an+1=pan+q(p=1,q=0)
■ 見分け方のポイント
an の前に倍数 p があり、さらに後ろに定数 q が足されている、受験漸化式の中で最も頻出する王道の形です。
an+1=3an+4 のように、「前に数字、後ろにも数字」という形になっていれば特性方程式型です。
■ 解法
このパターンも直接使える公式はありませんが、**「邪魔な数字を消して、等比型(グループAの2番)に無理やり変形する」**という魔法のようなテクニックを使います。具体的な手順は以下の3ステップです。
- 特性方程式を解く:元の漸化式の an+1 と an を、両方とも同じ文字(ここでは α とします)に置き換えたダミーの方程式を作り、それを解いて α の値を求めます。
- 引き算して形を変える:元の漸化式から、1で作った方程式を縦に引き算します。すると、邪魔だった後ろの定数が見事に消え、an+1−α=p(an−α) という綺麗な形に変形できます。
- 等比数列として解く:(an−α) という部分を「ひとつの大きな塊」として見ると、公比 p の等比数列になっています。あとは等比数列の公式を使って解き進めます。
■ 【例題】
a1=1,an+1=3an+4
■ 【解法ステップ】
STEP 1:特性方程式を解く
元の式の an+1 と an を両方とも α に置き換えた方程式を余白で解きます。
α−2αα=3α+4=4=−2
STEP 2:引き算して等比型を作る
元の漸化式から、いま作った特性方程式を縦に引き算して変形します。求めた α=−2 を代入します。
an+1−(−2)=3{an−(−2)}⟹an+1+2=3(an+2)
STEP 3:等比数列として解く
(an+2) をひとつの塊と見ると、これは「公比 3」の等比数列です。
初項は n=1 のときの値なので a1+2=1+2=3 となります。公式に当てはめます。
an+2=3⋅3n−1⟹an+2=3n
最後に +2 を右辺に移行します。
an=3n−2
💡 なぜこれで解けるのか
後ろにある定数「+4」が邪魔で、そのままでは等比数列の公式が使えません。そこで、**「定数をうまく式の中に吸収して、等比型(グループA-2)に無理やり持ち込む」**というのがこの解法の本質です。α=pα+q という特性方程式を引くことで、邪魔だった定数項が見事に相殺され、「塊の等比数列」が完成します。
⚠️ 注意ポイント
特性方程式を解いた後、公式に代入する「初項」として、問題文の a1 をそのまま使ってしまうミスが非常に多いです!あくまで等比数列になっているのは (an+2) という塊なので、初項も必ず a1+2 に計算し直すことを絶対に忘れないでください。
【答え】 an=3n−2
【グループD】「n→n+1 にズラして引く」2型
ここからは、特性方程式だけでは消せない「手強い邪魔者」を消し去る強力なテクニックです。式全体の番号を1つズラして引き算をすることで、邪魔な部分を一網打尽にします。
6. 多項式型(1次式): an+1=pan+qn+r
■ 見分け方のポイント
an の後ろに、定数だけでなく 「n を含む式」 が足されている形です。
an+1=2an+n+1 のように、特性方程式型のおしりに n がくっついていたらこのパターンです。
■ 解法
n があるせいで、普通の特性方程式(α と置く方法)ではうまくいきません。そこで次の3ステップを踏みます。
- ズラした式を作る:与えられた漸化式の n をすべて n+1 に置き換えた「1つ未来の式」を作ります。
- 縦に引き算する:ズラした式から元の式を縦に引き算します。すると n が消えて定数だけになり、階差数列 bn=an+1−an の漸化式が生まれます。
- 特性方程式型として解く:新しくできた bn の式は必ず特性方程式型(グループC)になるので、bn を解いてから、階差数列の公式(グループA-3)で an を求めます。
■ 【例題】
a1=1,an+1=2an+n+1
■ 【解法ステップ】
STEP 1:ズラした式を作る
元の式の n を n+1 に変えます。
an+2=2an+1+(n+1)+1⟹an+2=2an+1+n+2
STEP 2:縦に引き算する
いま作った式から、元の式を縦に引き算します。
an+2−)an+1an+2−an+1=2an+1+n+2=2an+n+1=2(an+1−an)+1
ここで、引き算によってできた an+1−an を、階差数列 bn と置きます。(すると an+2−an+1=bn+1 となります)
bn+1=2bn+1
STEP 3:特性方程式型として解く
できた式は特性方程式型なので、α=2α+1 より α=−1。
bn+1+1=2(bn+1)
数列 {bn+1} の初項を求めます。まず元の式から a2=2(1)+1+1=4。
階差数列の初項は b1=a2−a1=4−1=3 なので、b1+1=4 です。
bn+1=4⋅2n−1=22⋅2n−1=2n+1⟹bn=2n+1−1
最後に、階差数列の公式(グループA-3)を使って an を求めます。
n≥2 のとき、
an=a1+k=1∑n−1bk=1+k=1∑n−1(2k+1−1)=1+2−14(2n−1−1)−(n−1)=1+4⋅2n−1−4−n+1=2n+1−n−2
n=1 を代入すると 22−1−2=1 となり、a1=1 と一致します。
💡 なぜこれで解けるのか
邪魔な n を消すためには、「同じ n の傾きを持つ式同士を引き算する」のが一番手っ取り早いです。番号を1つズラした式を引くことで、n の項が定数にダウンサイズし、私たちが知っている特性方程式型に持ち込むことができるのです。
⚠️ 注意ポイント
bn の初項を求めるときに計算ミスが頻発します。b1 は a1 ではなく、a2−a1 であることを忘れないでください。必ず元の漸化式を使って a2 を正しく出してから引き算しましょう。
【答え】 an=2n+1−n−2
7. 和 Sn 混在型: Sn=pan+q
■ 見分け方のポイント
式の中に an だけでなく、数列の和を表す記号 Sn が混ざっている形です。
■ 解法
和 Sn はこのままでは計算できないので、数列 an のみに変換する必要があります。
ここで使うのが、和の超重要性質 Sn+1−Sn=an+1 です。
- 初項 a1 を自力で求める:元の式に n=1 を代入し、S1=a1 の性質を使って初項を出しておきます。
- ズラした式を作る:元の式の n を n+1 に置き換えた式を作ります。
- 縦に引き算する:ズラした式から元の式を引き算し、Sn+1−Sn を an+1 に置き換えて S を完全に消滅させます。
■ 【例題】
Sn=3an−2
■ 【解法ステップ】
STEP 1:初項 a1 を求める
元の式に n=1 を代入します。S1=a1 なので、
a1=3a1−2⟹−2a1=−2⟹a1=1
STEP 2:ズラした式を作る
元の式の n を n+1 に変えます。
Sn+1=3an+1−2
STEP 3:縦に引き算する
いま作った式から、元の式を縦に引き算します。
Sn+1−)SnSn+1−Sn=3an+1−2=3an−2=3an+1−3an
左辺の Sn+1−Sn を an+1 に書き換えます。
an+1=3an+1−3an
これを an+1=… の形に整理します。
−2an+1=−3an⟹an+1=23an
この式は「公比 23 の等比数列(グループA-2)」です。
STEP 1で求めた初項 a1=1 と等比数列の公式を使って、
an=1⋅(23)n−1=(23)n−1
💡 なぜこれで解けるのか
Sn は「a1 から an までの足し算」です。そこから Sn−1(a1 から an−1 までの足し算)を引けば、最後の an だけが残ります。この性質を利用して、邪魔な S を一網打尽にして an だけの式に変換しているのです。
⚠️ 注意ポイント
Sn 混在型の問題では、初項 a1 が問題文に書かれていないことがよくあります。「a1 がない!」と焦らず、まずは n=1 を代入して自力で初項を引っ張り出すのが最初の仕事だと覚えておきましょう。
【答え】 an=(23)n−1
【グループE・F・G】ここからの詳しい解説は次の記事へ!
ここまで、基本3型から始まり、階比型、特性方程式型、そしてズラして引く型まで、7つのパターンを解説しました。
なるほど!形は違っても、やってることは『知ってる基本形に戻す』ための作業なんですね!
その通りです!この視点さえ持っておけば、ここから先の応用パターンも全く怖くありません。
ここまでは「引き算」や「掛け算」を使って邪魔なものを消すアプローチでした。
次の記事では、引き算では消せない『指数の塊』や『分数』に対して、**【グループE:両辺を割って塊を作る】や【グループF:対数や逆数で置き換える】**といった、より高度な変形テクニックに挑戦します。
解説のボリュームが非常に大きく、1つの記事では消化不良を起こしてしまうため、グループE・F・Gの例題と計算プロセスの詳しい解説は、次の記事(「応用・発展編」)にてじっくりと解説していきます!
まずは、今回学んだグループA〜Dの7つの型について、手元の問題集を使って「何も見ずに自力で計算過程を書き下せるか」を徹底的に復習し、完璧な基礎を固めておいてください。準備ができたら、ぜひ次の応用編の扉を叩いてみましょう!