1は素数じゃないのはなぜ?

コラム

数学で素数を習うと、

  • 22
  • 33
  • 55
  • 77

のような数が出てきます。

ここで、多くの人が一度はこう思います。

1も「1と1でしか割れない」のだから、素数に入れてよさそう

と。

たしかに、感覚的にはかなりもっともらしく見えます。

むしろ、

  • 「1を素数から外しているだけでは?」
  • 「定義に『1より大きい』を後から付け足したように見える」

と感じる人もいるはずです。

でも実際には、

1は素数ではありません。

なぜでしょうか。

この記事では、 「そういう決まりだから」で終わらせずに、 素因数分解の考え方から、 なぜ定義がそうなっているのかを順番に見ていきます。

1. そもそも、なぜ素数を考えるのか

数学では、数をただ並べるだけでなく、

その数が掛け算でどうできているか

を調べたいことがよくあります。

たとえば

1212

という数は、

12=3×412=3\times 4

とも書けますし、

12=2×612=2\times 6

とも書けます。

さらに分けていくと、

12=2×2×312=2\times 2\times 3

となります。

このように、 数を掛け算でどんどん細かく見ていったとき、 最後に残る「これ以上は分けられない数」が素数です。

どうしてこんな見方をしたいのでしょうか。

それは、

  • その数が何で割れるか
  • 他の数とどんな共通点を持つか
  • 掛け算での構造がどうなっているか

を見やすくしたいからです。

たとえば

12=2×2×312=2\times 2\times 3

と分かっていれば、 12 は 2 でも 3 でも割れることがすぐ見えます。

また

18=2×3×318=2\times 3\times 3

と比べると、 12 と 18 はどちらも 2233 を持っているので、 少なくとも 2233 で割れることがすぐ分かります。

共通して持っている部分をまとめると

2×3=62\times 3=6

であり、12 と 18 はどちらも 6 でも割れると分かります。

このように、 数をバラバラに眺めるより、 掛け算の形にして比べたほうが性質が見えやすい のです。

2. そのために素因数分解を使いたい

数を掛け算で分けていく考え方の中でも、 特に大事なのが 素因数分解 です。

これは、

自然数を素数の掛け算の形にまで分けること

です。

たとえば

6=2×36=2\times 3 12=2×2×312=2\times 2\times 3 30=2×3×530=2\times 3\times 5

のような形です。

ここで数学では、

どんな自然数も、素数の掛け算としてただ1通りに表せる

という性質をとても大事にします1

たとえば

12=2×2×312=2\times 2\times 3

であり、 順番の違いをのぞけば中身はこれで決まります。

この「1通りに決まる」という性質があるからこそ、 数の性質を安心して調べられるのです。

もしこの形が何通りにもばらばらに書けてしまうと、

  • どれをその数の本当の形だと思えばよいのか
  • 他の数と比べるときに何を見ればよいのか

があいまいになってしまいます。

たとえば 2つの数に共通する素数があるかを見たいときも、 分解の形が1通りに決まっていれば、そのまま比べれば済みます。

でも分解の仕方が何通りもあるなら、 その数の性質を調べるときに、 どの分解の仕方を基準にすればよいのかが分かりにくくなります。

つまり、

素因数分解が1通りに決まることは、数の性質をきちんと調べるために必要

なのです。

3. では、なぜ1を素数に入れないのか

では、もし 1 も素数だとするとどうなるか考えてみましょう。

たとえば

6=2×36=2\times 3

ですが、1を使うと

6=1×2×36=1\times 2\times 3

とも書けます。

さらに

6=1×1×2×36=1\times 1\times 2\times 3 6=1×1×1×2×36=1\times 1\times 1\times 2\times 3

とも書けます。

つまり、

1を何個でも追加できてしまう

のです。

しかも 1 は、

掛けても何も変わらない

数です。

つまり、1を追加しても その数についての新しい情報は何も増えません。

1は素因数分解の中に入っても、 分解の中身を豊かにするのではなく、ただ見た目を増やすだけ なのです。

すると、どれが本当の分解なのかが決められなくなります。 その結果、素数の掛け算としてただ1通りに表せるという大事な性質が壊れてしまいます。

本当は

6=2×36=2\times 3

とすっきり決まってほしいのに、 1を素数にすると

  • 2×32\times 3
  • 1×2×31\times 2\times 3
  • 1×1×2×31\times 1\times 2\times 3
  • 1×1×1×2×31\times 1\times 1\times 2\times 3

のように、いくらでも増えてしまいます。

これでは、 素因数分解が「1通りに決まる」とは言えなくなってしまいます。

だから数学では、

素因数分解をきれいに成り立たせるために、1を素数に入れない

のです。

4. 1は掛け算で特別な役割を持つ

ここまでの話を踏まえると、 素数の定義に

1より大きい

という条件が入っているのは、 ただの思いつきではありません。

素因数分解を意味のある形で一意に扱うために、 1を最初から外しているのです。

1は素数ではありませんが、 掛け算では特別な役割を持っています。

たとえば

7×1=77\times 1=7 100×1=100100\times 1=100

です。

このように 1 は、 掛け算の世界では 特別な役割 を持っています。 数学では、このような数を 乗法単位元 と呼びます (かけ算で何も変えない数のことです)。

だから 1 は、

  • 素数でもない
  • 合成数でもない
  • 掛け算の中で特別な役割を持つ数

と考えるのが自然です。

まとめ

1が素数ではない理由は、 単に「そう決めたから」ではありません。

ポイントをまとめると、

  • 数学では、数を掛け算の形に分けることで性質を調べたい
  • そのためには、素因数分解が1通りに決まることが大事
  • 1は掛けても新しい情報を加えないので、素数に入れるとその性質を壊してしまう

ということです。

つまり、

1が素数でないのは、素因数分解を意味のある形で1通りに保つため

なのです。

素数はただの「割れにくい数」ではなく、 数を掛け算で調べるときに大事になる数だと考えると、 1が外れている理由もかなり自然に見えてきます。

Footnotes

  1. より正確には「1より大きい整数は、順序を除いてただ1通りに素数の積に分解できる」という事実で、算術の基本定理と呼ばれます。

ひろ アイコン ひろ