1は素数じゃないのはなぜ?
数学で素数を習うと、
のような数が出てきます。
ここで、多くの人が一度はこう思います。
1も「1と1でしか割れない」のだから、素数に入れてよさそう
と。
たしかに、感覚的にはかなりもっともらしく見えます。
むしろ、
- 「1を素数から外しているだけでは?」
- 「定義に『1より大きい』を後から付け足したように見える」
と感じる人もいるはずです。
でも実際には、
1は素数ではありません。
なぜでしょうか。
この記事では、 「そういう決まりだから」で終わらせずに、 素因数分解の考え方から、 なぜ定義がそうなっているのかを順番に見ていきます。
1. そもそも、なぜ素数を考えるのか
数学では、数をただ並べるだけでなく、
その数が掛け算でどうできているか
を調べたいことがよくあります。
たとえば
という数は、
とも書けますし、
とも書けます。
さらに分けていくと、
となります。
このように、 数を掛け算でどんどん細かく見ていったとき、 最後に残る「これ以上は分けられない数」が素数です。
どうしてこんな見方をしたいのでしょうか。
それは、
- その数が何で割れるか
- 他の数とどんな共通点を持つか
- 掛け算での構造がどうなっているか
を見やすくしたいからです。
たとえば
と分かっていれば、 12 は 2 でも 3 でも割れることがすぐ見えます。
また
と比べると、 12 と 18 はどちらも と を持っているので、 少なくとも や で割れることがすぐ分かります。
共通して持っている部分をまとめると
であり、12 と 18 はどちらも 6 でも割れると分かります。
このように、 数をバラバラに眺めるより、 掛け算の形にして比べたほうが性質が見えやすい のです。
2. そのために素因数分解を使いたい
数を掛け算で分けていく考え方の中でも、 特に大事なのが 素因数分解 です。
これは、
自然数を素数の掛け算の形にまで分けること
です。
たとえば
のような形です。
ここで数学では、
どんな自然数も、素数の掛け算としてただ1通りに表せる
という性質をとても大事にします1。
たとえば
であり、 順番の違いをのぞけば中身はこれで決まります。
この「1通りに決まる」という性質があるからこそ、 数の性質を安心して調べられるのです。
もしこの形が何通りにもばらばらに書けてしまうと、
- どれをその数の本当の形だと思えばよいのか
- 他の数と比べるときに何を見ればよいのか
があいまいになってしまいます。
たとえば 2つの数に共通する素数があるかを見たいときも、 分解の形が1通りに決まっていれば、そのまま比べれば済みます。
でも分解の仕方が何通りもあるなら、 その数の性質を調べるときに、 どの分解の仕方を基準にすればよいのかが分かりにくくなります。
つまり、
素因数分解が1通りに決まることは、数の性質をきちんと調べるために必要
なのです。
3. では、なぜ1を素数に入れないのか
では、もし 1 も素数だとするとどうなるか考えてみましょう。
たとえば
ですが、1を使うと
とも書けます。
さらに
とも書けます。
つまり、
1を何個でも追加できてしまう
のです。
しかも 1 は、
掛けても何も変わらない
数です。
つまり、1を追加しても その数についての新しい情報は何も増えません。
1は素因数分解の中に入っても、 分解の中身を豊かにするのではなく、ただ見た目を増やすだけ なのです。
すると、どれが本当の分解なのかが決められなくなります。 その結果、素数の掛け算としてただ1通りに表せるという大事な性質が壊れてしまいます。
本当は
とすっきり決まってほしいのに、 1を素数にすると
のように、いくらでも増えてしまいます。
これでは、 素因数分解が「1通りに決まる」とは言えなくなってしまいます。
だから数学では、
素因数分解をきれいに成り立たせるために、1を素数に入れない
のです。
4. 1は掛け算で特別な役割を持つ
ここまでの話を踏まえると、 素数の定義に
1より大きい
という条件が入っているのは、 ただの思いつきではありません。
素因数分解を意味のある形で一意に扱うために、 1を最初から外しているのです。
1は素数ではありませんが、 掛け算では特別な役割を持っています。
たとえば
です。
このように 1 は、 掛け算の世界では 特別な役割 を持っています。 数学では、このような数を 乗法単位元 と呼びます (かけ算で何も変えない数のことです)。
だから 1 は、
- 素数でもない
- 合成数でもない
- 掛け算の中で特別な役割を持つ数
と考えるのが自然です。
まとめ
1が素数ではない理由は、 単に「そう決めたから」ではありません。
ポイントをまとめると、
- 数学では、数を掛け算の形に分けることで性質を調べたい
- そのためには、素因数分解が1通りに決まることが大事
- 1は掛けても新しい情報を加えないので、素数に入れるとその性質を壊してしまう
ということです。
つまり、
1が素数でないのは、素因数分解を意味のある形で1通りに保つため
なのです。
素数はただの「割れにくい数」ではなく、 数を掛け算で調べるときに大事になる数だと考えると、 1が外れている理由もかなり自然に見えてきます。
Footnotes
-
より正確には「1より大きい整数は、順序を除いてただ1通りに素数の積に分解できる」という事実で、算術の基本定理と呼ばれます。 ↩