5は素数ではない?複素数に拡張された「ガウス整数」の世界

コラム

高校数学では、方程式の解を考えるために実数を拡張して「複素数」を学びます。 一方で、これとは全く別の単元として、素数や約数といった「整数」の性質も学びますよね。

実は、この「複素数」と「整数」という2つの異なる世界を融合させたような概念が存在します。 それが、今回紹介する ガウス整数 です。

複素数と整数って、全然別の単元というイメージがあります。 どうやって融合するんですか?

実は、「実部と虚部がどちらも整数である複素数」だけを集めて考えるんです。 普段私たちが知っている素数の概念とどう違うか見ていきましょう!

1. ガウス整数とは?

ガウス整数とは、ひとことで言うと 「実部も虚部も整数であるような複素数」 のことです。

数式で表すと、整数 a,ba, b を用いて

z=a+biz = a + bi

と書ける数の集合です。(ii は虚数単位)

例えば、以下のような数はすべてガウス整数です。

  • 2+3i2 + 3i
  • 55 (虚部が 00 のただの整数も含まれます)
  • 4i-4i (実部が 00 の純虚数も含まれます)
  • 1i-1 - i
複素数平面上で考えると、ガウス整数は $x$ 座標と $y$ 座標がともに整数となる、いわゆる「格子点」にピタッと乗る点ということですね。

2. ガウス整数の「大きさ」(ノルム)

整数の世界で「約数」や「素数」を考えるためには、数の「大きさ」を測るツールが必要です。 複素数の世界では、どのようにして大きさを定義したか覚えていますか?

確か、複素数の絶対値の2乗を 「複素数の大きさ(ノルム)」 としたのでしたよね。

ガウス整数 z=a+biz = a + bi のノルム N(z)N(z) は次のように定義されます。

N(a+bi)=a2+b2N(a+bi) = a^2 + b^2

実部と虚部の2乗の和ですね。 ノルムの素晴らしいところは、「掛け算をしても保存される」 という性質を持っていることです。

N(z1z2)=N(z1)N(z2)N(z_1 z_2) = N(z_1)N(z_2)

この性質のおかげで、ガウス整数同士の割り算や因数分解を、普通の整数(自然数)の掛け算に落とし込んで考えることができるようになります。

3. 「5」は素数ではない!?ガウス素数

通常の自然数の世界では、2,3,5,72, 3, 5, 7 \cdots といった数が「素数」です。 これ以上、小さな整数の掛け算に分解できない数ですね。

では、ガウス整数の世界ではどうでしょうか? 実は、普段素数だと思っている「5」は、ガウス整数の世界では素数ではありません。

えっ、5が分解できちゃうんですか?いったいどうやって?

そうなんです。虚数単位 $i$ を使うと、次のような因数分解を考えることができます。 5=1+4=12(2i)2=(1+2i)(12i)\begin{aligned} 5 &= 1 + 4 \\[20pt] &= 1^2 - (2i)^2 \\[20pt] &= (1 + 2i)(1 - 2i) \end{aligned}

なんと、55(1+2i)(1+2i)(12i)(1-2i) という2つのガウス整数の積に分解されてしまいました! では、分解された (1+2i)(1+2i) はさらに分解できるのでしょうか?

ここで先ほどの「ノルム」が活躍します。 N(1+2i)=12+22=5N(1+2i) = 1^2 + 2^2 = 5 です。

もし 1+2i1+2i が2つのガウス整数 α,β\alpha, \beta に分解できたとすると(αβ=1+2i\alpha \beta = 1+2i)、ノルムの性質から N(α)N(β)=5N(\alpha)N(\beta) = 5 になるはずです。 しかし、55 は通常の自然数の中では素数なので、掛けて 55 になる自然数のペアは 1×51 \times 5 しかありません。 つまり、これ以上は意味のある分解ができないことを示しています。1

このように、ガウス整数の世界でこれ以上分解できない数のことを ガウス素数 と呼びます。 55 はガウス素数ではありませんが、1+2i1+2i12i1-2i はガウス素数なのです。

4. どんな素数が「ガウス素数」であり続けるのか?

すべての素数が分解されてしまうわけではありません。 通常の素数が、ガウス整数の世界でどうなるかを少し調べてみましょう。

通常の素数 ppガウス整数での分解ガウス素数か?
22(1+i)(1i)(1+i)(1-i)×\times(分解される)
33分解できない\bigcirc(ガウス素数のまま)
55(1+2i)(12i)(1+2i)(1-2i)×\times(分解される)
77分解できない\bigcirc(ガウス素数のまま)
1111分解できない\bigcirc(ガウス素数のまま)
1313(2+3i)(23i)(2+3i)(2-3i)×\times(分解される)

表を見ると、ある規則性があることに気づきませんか? 実は、通常の素数 pp がガウス整数の世界でどう振る舞うかは、「4で割った余り」 によって分類されます。

  • p=2p = 2 の場合: 特殊な素数として分解される
  • p1(mod4)p \equiv 1 \pmod 4 の場合5,13,175, 13, 17 \cdots): 必ず2つのガウス素数の積に分解される
  • p3(mod4)p \equiv 3 \pmod 4 の場合3,7,113, 7, 11 \cdots): 分解できず、ガウス素数となる

この美しい事実は、整数論において「フェルマーの2平方定理」と呼ばれる有名な定理と深く結びついています。

複素数という全く違う分野の道具を持ってきたら、 整数の「4で割った余り」の性質が浮き彫りになるなんて驚きです。

まさにそこが数学の醍醐味ですよね! 数の世界を「拡張」することで、もとの世界の隠れた性質が綺麗に見えるようになるんです。

まとめ

今回は、実部と虚部がどちらも整数である ガウス整数 について紹介しました。

  • ガウス整数の大きさは「ノルム(a2+b2a^2 + b^2)」で測る
  • 通常の素数「5」などは、(1+2i)(12i)(1+2i)(1-2i) のように因数分解されてしまう
  • 分解されるかどうかは「4で割った余り」で決まる

高校数学で学ぶ「複素数」は方程式の解として登場することが多いですが、こうして「整数」として捉え直すことで、代数的整数論という大学数学の入り口につながっていきます。 ぜひ、普段計算している複素数を少し違った視点で眺めてみてくださいね。

Footnotes

  1. 【「意味のある分解ができない」ことの厳密な意味について】単数以外のガウス整数の積に分解できないという意味です。 本文中で N(α)N(β)=5N(\alpha)N(\beta)=5 となった際、自然数における 55 の約数は 1155 のみであるため、必ず N(α)=1N(\alpha)=1 または N(β)=1N(\beta)=1 のどちらかになります。 ガウス整数においてノルムが 11 になる数は 1,1,i,i1, -1, i, -i の4つのみであり、これらを「単数」と呼びます。 例えば 1+2i=i(2i)1+2i=i(2-i) のように単数をくくり出すことは常に可能ですが、これは自然数の世界で 5=1×55=1\times55=(1)×(5)5=(-1)\times(-5) と書くのと同じであり、本質的な素因数分解とは見なされません。 したがって、「単数以外のガウス整数の積に分解できない」という意味で、1+2i1+2i はガウス素数となります。


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