三角関数が絡む積分では、通常の置換積分だけで押し切れない問題が出てきます。
ここでは、次の順で理解できるように整理します。
- まず「どの手法を使うか」の判定ルール
- 次に三角置換の基本3パターン
- そのあと、半角・倍角・積和で式を整理する方法
- 定積分での区間変換
- 発展(半角置換 / 判別式 / 図形的理解 / 奇偶判定 / 部分積分併用)
前回の基礎記事(置換積分の基本)は以下です。
1. まずは判定:通常置換か、三角置換か
この章は、記事全体の「地図」です。
先に手法を決めると、後の章を迷わず使えます。
1.1 最初の分岐(ここだけ先に覚える)
- sin(ax+b),cos(ax+b) の合成関数:通常の u 置換
- 根号 a2−x2:x=asinθ
- 根号 x2+a2:x=atanθ
- 根号 x2−a2:x=cosθa
- 根号がなくても式が複雑:半角・倍角・積和で先に変形(3章)
この5つで、ほとんどの典型問題を仕分けできます。
1.2 なぜ三角置換が効くのか
目的は、根号の中を「2乗」にすることです。
- 1−sin2θ=cos2θ
- 1+tan2θ=cos2θ1
- cos2θ1−1=tan2θ
この変換で根号が外れると、あとは通常の積分になります。
2章はこの原理を3パターンに分けて丁寧に計算しています。
1.3 実戦チェック(解く前に毎回確認)
- どの型か(根号3型 or 公式変形型)を先に決めたか
- 置換後に dx と根号を同時に変換したか
- 定積分なら区間を先に変換したか
- 最後に元の変数へ戻したか(定積分で戻さない場合は区間が新変数になっているか)
2. 基礎3パターン(例題つき)
ここは「型を覚える」だけでなく、なぜ整理できるかを確認しながら読むのがポイントです。
以下では簡単のため a>0 とします。
2章は「根号がある問題」の標準処理です。
3章は「根号がないが式が複雑な問題」を扱います。
2.1 ルート(a^2 - x^2)型
I=∫0a/2a2−x2dx
で
x=asinθ,dx=acosθdθ,a2−x2=a∣cosθ∣
と置けば
I=∫dθ
区間は
x=0⇒θ=0,x=2a⇒sinθ=21⇒θ=6π
なので
I=∫0π/6dθ=6π
となります。
この型が解ける理由は、a2−x2 を
a2−a2sin2θ=a2(1−sin2θ)=a2cos2θ
とできるからです。
実際は a∣cosθ∣ ですが、通常は −2π≤θ≤2π を選び、cosθ≥0 として計算します。
2.2 ルート(x^2 + a^2)型
I=∫0ax2+a2dx
で
x=atanθ,dx=cos2θadθ,x2+a2=∣cosθ∣a
より
I=∫cosθ1dθ
区間は
x=0⇒θ=0,x=a⇒θ=4π
なので
I=∫0π/4cosθ1dθ=∫0π/4cos2θcosθdθ
u=sinθ,du=cosθdθ,cos2θ=1−u2
I=∫01/21−u2du=21∫01/2(1+u1+1−u1)du
=21[log1−u1+u]01/2=21log(2−12+1)=log(2+1)
この型では
x2+a2=a2tan2θ+a2=a2(1+tan2θ)=cos2θa2
となるため、根号が ∣cosθ∣a に簡単化されます。
通常は θ∈(−2π,2π) を取り、cosθ>0 として進めます。
2.3 ルート(x^2 - a^2)型
I=∫a2ax2−a2dx
で
x=cosθa,dx=cos2θasinθdθ,x2−a2=a∣tanθ∣
とすると
I=∫cosθ1dθ
区間は
x=a⇒θ=0,x=2a⇒θ=3π
なので
I=∫0π/3cosθ1dθ=∫0π/3cos2θcosθdθ
u=sinθ,du=cosθdθ,cos2θ=1−u2
I=∫03/21−u2du=21∫03/2(1+u1+1−u1)du
=21[log1−u1+u]03/2=21log(2−32+3)=log(2+3)
この型の本質は
cos2θ1−1=tan2θ
を使って、x2−a2 を a2tan2θ に変えることです。
実際は a∣tanθ∣ ですが、区間を選んで符号を固定すると整理しやすくなります。
3. 半角・倍角・積和で先に式を整理する
ここまでの2章は「根号を三角置換で処理する型」でした。
一方で実戦では、根号がなくても
- 形がそのままだと積分しにくい
- 公式変形すると一気に解きやすくなる
という問題が多く出ます。
この章では、先に典型変換を一覧化してから例題に入ります。
3.1 典型変換パターン一覧
A. 半角公式(分母に 1±cosx があるとき)
1+cosx=2cos22x,1−cosx=2sin22x
使いどころ:
- ∫1+cosxdx
- ∫1−cosxdx
B. 倍角公式(sinxcosx の積があるとき)
sinxcosx=21sin2x
使いどころ:
- ∫sinxcosxdx
- ∫xsinxcosxdx(先に簡単化してから別手法)
C. 2乗降下公式(sin2,cos2 があるとき)
sin2x=21−cos2x,cos2x=21+cos2x
使いどころ:
- ∫sin2xdx
- ∫cos2xdx
- ∫sin2xcosxdx(片側を簡単化)
D. 積和公式(周波数が違う積があるとき)
sinAcosB=21{sin(A+B)+sin(A−B)}
cosAcosB=21{cos(A+B)+cos(A−B)}
sinAsinB=21{cos(A−B)−cos(A+B)}
使いどころ:
- ∫sin3xcosxdx
- ∫cos2xcosxdx
3.2 例題1:半角公式でそのまま積分する
∫1+cosxdx
は、いきなり積分しにくいので
1+cosx=2cos22x
を使って
∫1+cosxdx=21∫cos22xdx=21∫(cos2x1)2dx
さらに
dxdtan2x=21(cos2x1)2
より
21∫(cos2x1)2dx=tan2x+C
となります。
3.3 例題2:倍角公式でそのまま積分する
∫sinxcosxdx
は
sinxcosx=21sin2x
を使って
∫sinxcosxdx=21∫sin2xdx=−41cos2x+C
です。
3.4 例題3:積和公式で和の形に変換
∫sin3xcosxdx
に積和公式を使うと
sin3xcosx=21{sin4x+sin2x}
なので
∫sin3xcosxdx=21∫(sin4x+sin2x)dx=−81cos4x−41cos2x+C
となります。
3.5 使い分けの実戦チェック
- 根号がある:2.1〜2.3 の三角置換を優先
- 根号がないが三角式が複雑:まずこの章の公式変形
- 変形後に内側と微分がそろうなら、通常の u 置換へ接続
この順で判定すると、典型問題をかなり漏れなく処理できます。
ここまでで不定積分の基本ルートは揃います。
次の4章で、定積分の区間変換ミスを防ぎます。
4. 定積分での最重要ポイント(区間変換)
三角置換は、定積分だと区間変換ミスが最頻出です。
ここは計算力というより手順管理の章です。
「置換したらすぐ区間を変える」を徹底します。
例:
I=∫0a/2a2−x2dx
で x=asinθ と置くと
- x=0⇒θ=0
- x=2a⇒sinθ=21⇒θ=6π
なので
I=∫0π/6dθ=6π
となります。
置換したらすぐ区間を書くを習慣にすると、定積分の失点が激減します。
補足:定積分では「戻し忘れ」より「区間変換漏れ」の方が多いです。
先に区間を書いてから式変形すると、変数混在の事故を防げます。
5. 発展①:t = tan(θ/2)(半角置換)
ここから先は発展です。
必要な章だけつまみ読みしても問題ありません。
三角関数の有理式
R(sinθ,cosθ)
には、半角置換が効きます。
ここでいう「有理式」とは、例えば次のように
分母・分子が sinθ,cosθ の多項式になっている式のことです。
- 1+cosθ1
- 1+cosθsinθ
- 2−cosθ1+sinθ
このタイプは、sinθ,cosθ が混ざっているため、通常の u 置換だと一発では整理しにくいことが多いです。
半角置換を使うと、全部 t だけの分数(有理式)になるので計算しやすくなります。
t=tan2θ
とおくと
sinθ=1+t22t,cosθ=1+t21−t2,dθ=1+t22dt
となり、積分が t の有理式に落ちます。
例:
∫1+cosθdθ
は
1+cosθ=1+t22,dθ=1+t22dt
なので
∫1+cosθdθ=∫dt=t+C=tan2θ+C
です。
もう1問だけ見ます。
∫1+cosθsinθdθ
半角置換で
sinθ=1+t22t,cosθ=1+t21−t2,dθ=1+t22dt
を入れると
1+cosθ=1+1+t21−t2=1+t22
なので
1+cosθsinθdθ=1+t221+t22t⋅1+t22dt=1+t22tdt
したがって
∫1+cosθsinθdθ=∫1+t22tdt=log(1+t2)+C
最後に t=tan2θ を戻して
∫1+cosθsinθdθ=log(1+tan22θ)+C
となります(logcos2(θ/2)1+C と同値)。
使いどころは、R(sinθ,cosθ) のような「三角関数の有理式」です。
通常の置換で内側と微分がそろわないとき、半角置換は強い選択肢になります。
6. 発展②:二次式の分母を判別式 D で完全攻略
この章で扱うのは、次の形です。
∫x2+bx+cdx
三角積分の途中や、置換後によく現れます。
この形は判別式
D=b2−4c
の符号で解き方が決まります。最初に対応をまとめると次の通りです。
D < 0:平方完成して u2+a2 型にする
D = 0:(x−r)2 型として処理する
D > 0:因数分解して部分分数分解する
ここでは逆三角関数の記号を使わず、定積分の代表例で確認します。
6.1 D < 0:平方完成して三角置換
例:
I−=∫−10x2+2x+2dx
このとき
D=22−4⋅2=−4<0
なので平方完成します。
x2+2x+2=(x+1)2+1
ここで
u=x+1
とおくと区間は x:−1→0 から u:0→1 へ変わり
I−=∫01u2+1du
さらに
u=tanθ,du=cos2θ1dθ,1+u2=cos2θ1
より
I−=∫0π/4dθ=4π
となります。
6.2 D = 0:重解なので二乗分母
例:
I0=∫01x2+2x+1dx=∫01(x+1)2dx
なので
I0=[−x+11]01=21
です。
6.3 D > 0:因数分解して部分分数分解
例:
I+=∫01/2x2−3x+2dx
このとき
D=(−3)2−4⋅2=1>0
なので
x2−3x+2=(x−1)(x−2)
と因数分解でき、
(x−1)(x−2)1=−x−11+x−21
より
I+=∫01/2(−x−11+x−21)dx
=[−log∣x−1∣+log∣x−2∣]01/2=log23
となります。
まとめると
D<0:平方完成(必要なら三角置換)
D=0:二乗分母
D>0:因数分解 + 部分分数分解
の3パターンで、∫ dx/(x^2+bx+c) はすべて処理できます。
7. 図形的に理解すると戻しで迷わない
三角置換の戻しで止まる人は、直角三角形で対応を作ると楽になります。
7.1 x = a tanθ の場合
tanθ=ax
なので、
- 対辺:x
- 隣辺:a
- 斜辺:x2+a2
と取れば
cosθ1=ax2+a2
が一発で読めます。
7.2 x = a/cosθ の場合
cosθ1=ax
なので
- 斜辺:x
- 隣辺:a
- 対辺:x2−a2
として
tanθ=ax2−a2
を戻せます。
図形化すると、式変形だけで追うより符号ミスを防ぎやすくなります。
8. 発展③:sin^m x cos^n x の奇偶判定
三角積分で最も頻出なのが、この奇偶判定です。
先に指数の偶奇を見るだけで、使う手法がほぼ決まります。
- sin の指数が奇数:sinx を1つ残して、残りを cosx で表す
- cos の指数が奇数:cosx を1つ残して、残りを sinx で表す
- 両方偶数:半角公式(3章)へ
例1:sin の指数が奇数
∫sin3xcosxdx
は
u=sinx,du=cosxdx
で
∫sin3xcosxdx=∫u3du=41sin4x+C
例2:両方偶数
∫sin2xcos2xdx
は
sinxcosx=21sin2x
より
sin2xcos2x=41sin22x=81(1−cos4x)
として積分できます。
このケースは「置換」より「公式変形」が主役です。
9. 発展④:部分積分との併用(多項式 × 三角関数)
次のような問題では、置換だけでは進みにくく、部分積分が必要です。
∫xsinxdx,∫x2cosxdx
9.1 基本例:x sin x 型
∫xsinxdx=x(−cosx)−∫1⋅(−cosx)dx
=−xcosx+sinx+C
9.2 どこで併用するか
- 先に三角公式で簡単化できるなら簡単化する
- その後に「多項式 × 三角関数」が残るなら部分積分
つまり実戦では
公式変形 -> 置換 or 部分積分
の順で判断すると安定します。
10. 実戦で崩れやすいミス8選
最後の確認用チェックリストです。
本番前にここだけ見直しても効果があります。
- 置換後の dx を変換し忘れる
対策:置換した直後に「dx=⋯」を1行で書く
- 根号の符号条件を無視する
例:1−sin2θ=∣cosθ∣ をそのまま cosθ にしてしまう
対策:θ の範囲を先に決める
- 定積分で区間変換をしない
対策:置換の直後に上下限を書き換える
- cosθ1,tanθ を x に戻す途中で対応を取り違える
対策:直角三角形を1回描いてから戻す
- 半角・倍角・積和の公式を混同する
対策:使う公式を先に1つだけ書いてから式変形する
- 公式変形と置換の順番が逆になる
対策:「先に形を整える -> その後で置換」を徹底する
D の場合分けをせずに二次式分母へ突っ込む
対策:∫x2+bx+cdx が出たら、まず D=b^2-4c を計算する
- 途中で「どの章の手法か」を見失う
対策:解く前に「2章型 / 3章型 / 6章型」を1つ宣言する
チェックリスト化しておくと、本番で崩れにくくなります。
11. 例題演習
次の問題は、この記事の内容に対応しています。
まず自分で解いてから、解答を開いて確認してください。
問題1
∫01/21−x2dx
解答・解説を見る
対応章:2章(ルート(a^2 - x^2)型)
x=sinθ,dx=cosθdθ,1−x2=cosθ
区間変換:
x=0⇒θ=0,x=21⇒θ=6π
したがって
∫01/21−x2dx=∫0π/6dθ=6π
問題2
∫1−cosxdx
解答・解説を見る
対応章:3章(半角公式)
1−cosx=2sin22x
なので
∫1−cosxdx=21∫sin22xdx
dxdcot2x=−21csc22x
を使って
∫1−cosxdx=−cot2x+C
問題3
∫01/3x2−5x+6dx
解答・解説を見る
対応章:6章(D > 0)
D=(−5)2−4⋅6=1>0
なので
x2−5x+6=(x−2)(x−3)
(x−2)(x−3)1=−x−21+x−31
より
∫01/3x2−5x+6dx=[−log∣x−2∣+log∣x−3∣]01/3=log78
問題4
∫sin5xcosxdx
解答・解説を見る
対応章:8章(奇偶判定)
u=sinx,du=cosxdx
なので
∫sin5xcosxdx=∫u5du=6u6+C=6sin6x+C
問題5
∫xcosxdx
解答・解説を見る
対応章:9章(部分積分併用)
部分積分:
f(x)=x,g′(x)=cosx,f′(x)=1,g(x)=sinx
∫xcosxdx=xsinx−∫sinxdx=xsinx+cosx+C
まとめ
最後に、実戦での流れを1本にまとめます。
- 先に型を判定する(根号の型か、公式変形型か)
- 根号型なら三角置換、非根号型なら半角・倍角・積和を先に使う
- 定積分では区間を先に変換する
- 戻しで迷ったら図形を使う
- 多項式が残ったら部分積分との併用を考える
この順番で解けば、三角関数が絡む積分の典型問題はかなり安定して解けます。
まずは1パターンずつ、手を動かして型を固定してみてください。
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