積分は微分形を見抜け|置換積分を最短で解く公式と典型パターン完全版

解法

積分は「計算力」より先に、 式の見方で差がつきます。

特に、

  • 分母の中身
  • 根号の中身
  • 三角関数や指数関数の中身

の近くに、その微分があるときは **微分形(導関数型)**として最短で解けます。

この記事では、次の流れで整理します。

  1. 微分形で速くなる理由
  2. 公式の導出と使い方
  3. 置換を書かずに読むコツ
  4. 定積分・ミス対策・演習

この記事は、置換積分をできるだけ速く解くための考え方を整理する記事です。 置換積分を基礎から順番に学びたい場合は、先にこちらを読んでください。

1. 微分形を見抜くと、なぜ速くなるのか

先に結論です。積分で速くなるかどうかは、 次の形を見抜けるかでほぼ決まります。

F(g(x))g(x)dx\int F(g(x))g'(x)\,dx

このとき、内側を

u=g(x)u=g(x)

とおくと微分して

du=g(x)dxdu=g'(x)\,dx

が出るので、

F(g(x))g(x)dx=F(u)du\int F(g(x))g'(x)\,dx=\int F(u)\,du

と変換できます。

1.1 なぜこれで正しいか(連鎖律の逆)

合成関数の微分は

ddxΦ(g(x))=Φ(g(x))g(x)\frac{d}{dx}\Phi(g(x))=\Phi'(g(x))g'(x)

です。これを「逆向き」に読むと

Φ(g(x))g(x)dx=Φ(g(x))+C\int \Phi'(g(x))g'(x)\,dx=\Phi(g(x))+C

になります。

つまり積分は、 「外側の関数を戻す」作業であり、 そのために 中身の微分が横にあること が必要です。

1.2 公式としてまとめる

ここまでを、実戦で使う形にまとめると次です。

もし F(u)=f(u) なら f(g(x))g(x)dx=F(g(x))+C\text{もし }F'(u)=f(u)\text{ なら }\int f(g(x))g'(x)\,dx=F(g(x))+C

これが「微分形の接触」を使う公式です。 この1本を、以降の全章で使います。

導出を見る(置換から導く)

まず

u=g(x),du=g(x)dxu=g(x),\quad du=g'(x)\,dx

とおくと

f(g(x))g(x)dx=f(u)du\int f(g(x))g'(x)\,dx=\int f(u)\,du

です。ここで F(u)=f(u)F'(u)=f(u) を満たす原始関数 FF を使えば

f(u)du=F(u)+C\int f(u)\,du=F(u)+C

なので

f(g(x))g(x)dx=F(g(x))+C\int f(g(x))g'(x)\,dx=F(g(x))+C

を得ます。

導出を見る(連鎖律の逆)

連鎖律より

ddxF(g(x))=F(g(x))g(x)=f(g(x))g(x)\frac{d}{dx}F(g(x))=F'(g(x))g'(x)=f(g(x))g'(x)

なので、両辺を積分して

f(g(x))g(x)dx=F(g(x))+C\int f(g(x))g'(x)\,dx=F(g(x))+C

となります。

1.3 どこを見るか(実戦の視点)

式を見たら、次の順で確認します。

  1. 中身候補 g(x)g(x) を探す(分母・根号・指数・三角関数の中)
  2. 近くに g(x)g'(x) があるか確認する
  3. 係数が違うなら定数調整できるか確認する

例えば

6x3x2+1dx\int \frac{6x}{3x^2+1}\,dx

では、分母の中身は 3x2+13x^2+1、その微分は 6x6x なので すぐに微分形です。

一方で

xx2+1dx\int \frac{x}{x^2+1}\,dx

は分母の微分が 2x2x なので、 12\frac12 を作る調整が必要です。

この「係数調整まで含めて見抜く」のが、微分形の基本です。

2. 置換を書かずに解けるコツ(公式の暗算適用)

ここで言う「置換を書かずに解く」は、置換をやっていないのではなく、 置換を頭の中で短く実行しているという意味です。 言い換えると、1.2の公式

f(g(x))g(x)dx=F(g(x))+C(F=f)\int f(g(x))g'(x)\,dx=F(g(x))+C\quad(F'=f)

を、毎回の問題に暗算で当てはめています。

2.1 頭の中でやっている4ステップ

  1. 中身を決める(u=g(x)u=g(x) を心の中で確定)
  2. 微分を確認する(du=g(x)dxdu=g'(x)dx が作れるか確認)
  3. 係数をそろえる(足りない定数を前に出す)
  4. 原始関数を戻す(uu の結果を g(x)g(x) に戻す)

この4ステップを1行で実行できると、直接読みになります。

2.2 直接読んでよい条件

  1. 中身が1つに定まる(g(x)g(x) を迷わない)
  2. その微分が同時に見える(係数違いまで把握できる)
  3. 定積分なら上下限処理を最後まで安全に追える

この3つを満たすときだけ省略します。 怪しければ、置換を明示する方が正確です。

2.3 まずは置換で解く -> 慣れたら省略する

同じ問題を、まず「置換を明示する解法」で解きます。 そのあと、どこを省略できるかを確認します。

例:

2x1+x2dx\int \frac{2x}{1+x^2}\,dx

置換を明示すると

u=1+x2,du=2xdxu=1+x^2,\quad du=2x\,dx

なので

2x1+x2dx=1udu=logu+C=log(1+x2)+C\int \frac{2x}{1+x^2}\,dx =\int \frac{1}{u}\,du =\log|u|+C =\log(1+x^2)+C

となります。 このとき

  • f(u)=1uf(u)=\frac{1}{u}
  • F(u)=loguF(u)=\log|u|
  • g(x)=1+x2g(x)=1+x^2

なので、公式に直接当てると F(g(x))=log(1+x2)F(g(x))=\log(1+x^2) と読めます。

慣れてきたら、次の2行を頭の中で処理して省略できます。

  1. u=1+x2, du=2xdxu=1+x^2,\ du=2x\,dx
  2. 最後の uxu\to x への戻し

要するに、頭の中で 1udu\int \frac{1}{u}\,du を計算して、 最後に u=1+x2u=1+x^2 を代入するだけなので、 この型は途中式をかなり短くできます。

その結果、紙の上では

2x1+x2dx=log(1+x2)+C\int \frac{2x}{1+x^2}\,dx=\log(1+x^2)+C

と短く書けます。

2.5 例2(係数調整あり)

(3x+1)5dx\int (3x+1)^5\,dx

頭の中では

  • u=3x+1u=3x+1
  • du=3dxdu=3\,dx なので dx=13dudx=\frac{1}{3}du

と読んでいるので

(3x+1)5dx=13u5du=13u66+C=(3x+1)618+C\int (3x+1)^5\,dx =\frac{1}{3}\int u^5\,du =\frac{1}{3}\cdot\frac{u^6}{6}+C =\frac{(3x+1)^6}{18}+C

となります。 ここでは

  • f(u)=u5f(u)=u^5
  • F(u)=u66F(u)=\frac{u^6}{6}
  • g(x)=3x+1g(x)=3x+1

を使っており、係数 13\frac13 を調整すれば 公式の形にそのまま一致します。

ここで省略できるポイントは、次の2つです。

  1. u=3x+1, du=3dx, dx=13duu=3x+1,\ du=3dx,\ dx=\frac13du の書き下し
  2. u5u^5 の積分後に u=3x+1u=3x+1 を戻す1行

頭の中では 「13u5du\frac13\int u^5du を計算して、最後に u=3x+1u=3x+1 を代入」 と処理しているだけなので、慣れると

(3x+1)5dx=(3x+1)618+C\int (3x+1)^5\,dx=\frac{(3x+1)^6}{18}+C

と短く書けます。

2.6 例3(定積分:頭の中でも区間は意識)

01xex2dx\int_0^1 x e^{x^2}\,dx

頭の中では

  • u=x2u=x^2
  • du=2xdxdu=2x\,dx
  • 区間は x:01x:0\to1 なので u:01u:0\to1

まで同時に処理します。

01xex2dx=1201eudu=e12\int_0^1 x e^{x^2}\,dx =\frac12\int_0^1 e^u\,du =\frac{e-1}{2}

不定積分より、定積分の直接読みは区間管理が重要です。 ここでは

  • f(u)=euf(u)=e^u
  • F(u)=euF(u)=e^u
  • g(x)=x2g(x)=x^2

として公式を使っています。

この例で省略できるのは 「u=x2, du=2xdxu=x^2,\ du=2x\,dx の明示」と「eue^u の基本積分の途中行」です。

一方で、省略しない方がよいのは区間です。 頭の中で計算する場合でも 「u:01u:0\to1」への変換は必ず意識します。

要するに、定積分でも本質は 「uu で積分して最後に値を評価する」だけですが、 区間管理だけは省略しないのが安全です。

2.7 直接読みを避けるべき場面

  • 中身候補が複数あり、どれを採用するか迷う
  • 途中で部分分数分解・三角公式変形が必要
  • 記号が多く、係数調整の符号ミスが起きやすい

こういう問題は、置換を書く方が速くて安全です。

3. 典型パターンの全体地図(4系統)

導関数型を細かく丸暗記するより、まず5系統で整理します。 この章の全パターンは、すべて

f(g(x))g(x)dx=F(g(x))+C(F=f)\int f(g(x))g'(x)\,dx=F(g(x))+C\quad(F'=f)

の具体例です。

  1. 基本合成型
  2. べき・有理型
  3. 指数・対数型
  4. 三角・逆三角対応型

3.1 各系統の基本パターン式

  1. 基本合成型
F(g(x))g(x)dx\int F(g(x))g'(x)\,dx
  1. べき・有理型
g(x)(ag(x)+b)ndx,g(x)g(x)dx,g(x)(ag(x)+b)ndx\int g'(x)(ag(x)+b)^n\,dx,\quad \int \frac{g'(x)}{g(x)}\,dx,\quad \int \frac{g'(x)}{(ag(x)+b)^n}\,dx g(x)g(x)2+a2dx,g(x)a2g(x)2dx\int \frac{g'(x)}{g(x)^2+a^2}\,dx,\quad \int \frac{g'(x)}{a^2-g(x)^2}\,dx
  1. 指数・対数型
eg(x)g(x)dx,ag(x)g(x)dx,g(x)g(x)log(g(x))dx\int e^{g(x)}g'(x)\,dx,\quad \int a^{g(x)}g'(x)\,dx,\quad \int \frac{g'(x)}{g(x)}\log(g(x))\,dx
  1. 三角・逆三角対応型
sin(g(x))g(x)dx,cos(g(x))g(x)dx,g(x)cos2(g(x))dx\int \sin(g(x))g'(x)\,dx,\quad \int \cos(g(x))g'(x)\,dx,\quad \int \frac{g'(x)}{\cos^2(g(x))}\,dx g(x)1+g(x)2dx,g(x)1g(x)2dx\int \frac{g'(x)}{1+g(x)^2}\,dx,\quad \int \frac{g'(x)}{\sqrt{1-g(x)^2}}\,dx

3.2 最初の判定手順(章をまたいで共通)

  1. そのまま微分形か確認する
  2. 係数調整で作れるか確認する
  3. 作れたら上の4系統のどれかに分類する

この順で見れば、遠回りの変形を減らせます。

3.3 見取り図を使う利点

4章以降でどの例題が出ても、 「どの型の練習か」が明確になります。 結果として、式変形ではなく判断に使う時間を短縮できます。

4. 基本合成型

原型は

F(g(x))g(x)dx\int F(g(x))g'(x)\,dx

です。 つまり1.2の公式をそのまま使う章です。

例1

cos(x2)2xdx\int \cos(x^2)\cdot 2x\,dx

置換で解く:

u=x2,du=2xdxu=x^2,\quad du=2x\,dx cos(x2)2xdx=cosudu=sinu+C=sin(x2)+C\int \cos(x^2)\cdot 2x\,dx =\int \cos u\,du =\sin u + C =\sin(x^2)+C

頭の中で解く:

  • 中身 x2x^2 と微分 2x2x が隣にある
  • 外側 cosu\cos u の原始関数は sinu\sin u
cos(x2)2xdx=sin(x2)+C\int \cos(x^2)\cdot 2x\,dx=\sin(x^2)+C

例2

ex33x2dx\int e^{x^3}\cdot 3x^2\,dx

置換で解く:

u=x3,du=3x2dxu=x^3,\quad du=3x^2\,dx ex33x2dx=eudu=eu+C=ex3+C\int e^{x^3}\cdot 3x^2\,dx =\int e^u\,du =e^u+C =e^{x^3}+C

頭の中で解く:

  • 中身 x3x^3 の微分が 3x23x^2
  • 外側 eue^u は積分しても eue^u
ex33x2dx=ex3+C\int e^{x^3}\cdot 3x^2\,dx=e^{x^3}+C

見抜きポイント

  • 関数の外側(sin,cos,e,log\sin,\cos,e^\Box,\log など)より先に
  • 中身の微分があるかを見る

5. べき・有理型

ここは「分母・指数」に中身がある形です。 いずれも公式の f(u),F(u)f(u),F(u) を固定して当てるだけです。

5.1 べき型

g(x)(ag(x)+b)ndx\int g'(x)(ag(x)+b)^n\,dx

例:

4x(2x2+1)3dx\int 4x(2x^2+1)^3\,dx

置換で解く:

u=2x2+1,du=4xdxu=2x^2+1,\quad du=4x\,dx 4x(2x2+1)3dx=u3du=u44+C=(2x2+1)44+C\int 4x(2x^2+1)^3\,dx =\int u^3\,du =\frac{u^4}{4}+C =\frac{(2x^2+1)^4}{4}+C

頭の中で解く:

  • 中身 2x2+12x^2+1、微分 4x4x
  • 外側 u3u^3 の原始関数は u44\frac{u^4}{4}
4x(2x2+1)3dx=(2x2+1)44+C\int 4x(2x^2+1)^3\,dx=\frac{(2x^2+1)^4}{4}+C

5.2 対数型

g(x)g(x)dx=logg(x)+C\int \frac{g'(x)}{g(x)}\,dx=\log|g(x)|+C

例:

4xx2+1dx\int \frac{4x}{x^2+1}\,dx

置換で解く:

u=x2+1,du=2xdxu=x^2+1,\quad du=2x\,dx 4xx2+1dx=22xx2+1dx=21udu=2log(x2+1)+C\int \frac{4x}{x^2+1}\,dx =2\int \frac{2x}{x^2+1}\,dx =2\int \frac{1}{u}\,du =2\log(x^2+1)+C

頭の中で解く:

  • 分母中身 x2+1x^2+1 の微分は 2x2x
  • 分子 4x4x はその2倍なので、係数 22 を前に出す
  • あとは logu\log|u|
4xx2+1dx=2log(x2+1)+C\int \frac{4x}{x^2+1}\,dx=2\log(x^2+1)+C

5.3 分母べき型

g(x)(ag(x)+b)ndx\int \frac{g'(x)}{(ag(x)+b)^n}\,dx

例:

dx(2x+3)2\int \frac{dx}{(2x+3)^2}

置換で解く:

u=2x+3,du=2dxu=2x+3,\quad du=2dx 12u2du=12(2x+3)+C\frac{1}{2}\int u^{-2}\,du =-\frac{1}{2(2x+3)}+C

です。ここで負号が出る理由は u2du=u11\int u^{-2}du=\frac{u^{-1}}{-1} だからです。

頭の中で解く:

  • 中身 2x+32x+3、微分 22
  • (2x+3)2(2x+3)^{-2} の積分は「指数を1つ上げて割る」
dx(2x+3)2=12(2x+3)+C\int \frac{dx}{(2x+3)^2}=-\frac{1}{2(2x+3)}+C

5.4 二次式型

g(x)g(x)2+a2dx,g(x)a2g(x)2dx\int \frac{g'(x)}{g(x)^2+a^2}\,dx, \qquad \int \frac{g'(x)}{a^2-g(x)^2}\,dx

この型は後で三角・双曲線・部分分数に接続する土台です。 分母2次式の問題で、分子がその微分に近いときはまずこの見方をします。

6. 指数・対数型

この章も、公式の f(u)f(u) を指数・対数にしたケースです。

6.1 指数関数

eg(x)g(x)dx=eg(x)+C\int e^{g(x)}g'(x)\,dx=e^{g(x)}+C ag(x)g(x)dx=ag(x)loga+C\int a^{g(x)}g'(x)\,dx=\frac{a^{g(x)}}{\log a}+C

例:

5x22xdx\int 5^{x^2}\cdot 2x\,dx

置換で解く:

u=x2,du=2xdxu=x^2,\quad du=2x\,dx 5x22xdx=5udu=5x2log5+C\int 5^{x^2}\cdot 2x\,dx =\int 5^u\,du =\frac{5^{x^2}}{\log 5}+C

頭の中で解く:

  • 中身 x2x^2 の微分が 2x2x
  • 外側 5u5^u の原始関数は 5ulog5\frac{5^u}{\log 5}
5x22xdx=5x2log5+C\int 5^{x^2}\cdot 2x\,dx=\frac{5^{x^2}}{\log 5}+C

6.2 対数を含む型

log(g(x))g(x)g(x)dx\int \frac{\log(g(x))}{g(x)}g'(x)\,dx

logudu\int \log u\,du

に落ちるので、部分積分で処理できます。

例:

2xlog(1+x2)1+x2dx\int \frac{2x\log(1+x^2)}{1+x^2}\,dx

置換で解く:

u=1+x2, du=2xdxu=1+x^2,\ du=2x\,dx loguudu=12(logu)2+C=12(log(1+x2))2+C\int \frac{\log u}{u}\,du =\frac{1}{2}(\log u)^2+C =\frac{1}{2}(\log(1+x^2))^2+C

ここは v=loguv=\log u と見ると dv=1ududv=\frac{1}{u}du なので、 vdv=v22\int v\,dv=\frac{v^2}{2} に落ちています。

頭の中で解く:

  • 分母中身 1+x21+x^2 の微分が分子の 2x2x
  • 外側は loguu\frac{\log u}{u} 型なので 12(logu)2\frac12(\log u)^2 に着地
2xlog(1+x2)1+x2dx=12(log(1+x2))2+C\int \frac{2x\log(1+x^2)}{1+x^2}\,dx =\frac{1}{2}(\log(1+x^2))^2+C

7. 三角・逆三角対応型

この章は、公式の f(u)f(u) を三角関数系にしたケースです。

7.1 三角関数

sin(g(x))g(x)dx=cos(g(x))+C\int \sin(g(x))g'(x)\,dx=-\cos(g(x))+C cos(g(x))g(x)dx=sin(g(x))+C\int \cos(g(x))g'(x)\,dx=\sin(g(x))+C g(x)cos2(g(x))dx=tan(g(x))+C\int \frac{g'(x)}{\cos^2(g(x))}\,dx=\tan(g(x))+C

この3つはすべて「外側の基本積分」に帰着しています。

置換で解く場合は共通で

u=g(x),du=g(x)dxu=g(x),\quad du=g'(x)\,dx

として、sinudu,cosudu,1cos2udu\int \sin u\,du,\int \cos u\,du,\int \frac{1}{\cos^2u}du に変換して計算します。

頭の中で解く場合は 「外側の基本積分を思い出して、中身だけ戻す」処理をします。

sin(g(x))g(x)dx=cos(g(x))+C\int \sin(g(x))g'(x)\,dx=-\cos(g(x))+C cos(g(x))g(x)dx=sin(g(x))+C\int \cos(g(x))g'(x)\,dx=\sin(g(x))+C g(x)cos2(g(x))dx=tan(g(x))+C\int \frac{g'(x)}{\cos^2(g(x))}\,dx=\tan(g(x))+C

7.2 逆三角対応

g(x)1+g(x)2dx\int \frac{g'(x)}{1+g(x)^2}\,dx g(x)1g(x)2dx\int \frac{g'(x)}{\sqrt{1-g(x)^2}}\,dx

は「中身と微分」が見える典型です。 前者は 1+u21+u^2、後者は 1u2\sqrt{1-u^2} を外側に持つ型です。

置換で解くなら u=g(x)u=g(x) を明示し、 頭の中で解くなら「この外側はどの基本形か」を先に判定します。

g(x)1+g(x)2dx=du1+u2\int \frac{g'(x)}{1+g(x)^2}\,dx=\int \frac{du}{1+u^2} g(x)1g(x)2dx=du1u2\int \frac{g'(x)}{\sqrt{1-g(x)^2}}\,dx=\int \frac{du}{\sqrt{1-u^2}}

7.3 接続例(2段階)

2x1+x4dx\int \frac{2x}{1+x^4}\,dx

は、いきなりでは見えませんが

u=x2, du=2xdxu=x^2,\ du=2x\,dx

du1+u2\int \frac{du}{1+u^2}

に落ちます。

この時点で「7.2の型に入った」と判断できます。

最初の1手で「見える形に変える」代表例です。

8. 微分形を見つけるコツ(実戦用)

4〜7章の型を使う前に、まず「微分形がどこに隠れているか」を見つけます。 この章は、その判定コツだけをまとめます。

8.1 分母・根号・指数・三角の「中身」を先に丸で囲む

候補は次です。

  • 分母の中身
  • 根号の中身
  • 指数の肩
  • 三角関数の引数

この「中身候補」を先に特定しないと、後の判定がぶれます。

8.2 中身を微分して、式中にあるか確認する

たとえば分母が x2+2x+5x^2+2x+5 なら微分は 2x+22x+2 です。 式中に x+1x+1 があれば、係数調整で作れると判断できます。

8.3 係数違いは「前に出す定数」で吸収する

よくあるのは

xx2+1dx\int \frac{x}{x^2+1}\,dx

のように微分が半分だけあるケースです。 このときは

122xx2+1dx\frac12\int \frac{2x}{x^2+1}\,dx

と直して型に入れます。

8.4 それでも見えなければ1行変形

次の1手で見えることが多いです。

  • 因数分解
  • 部分分数分解
  • 半角・倍角などの公式変形
  • xF(x2)xF(x^2) 型への寄せ

変形の目的は計算を複雑にすることではなく、 4〜7章の型に乗せることです。

9. 多項式以外も g(x) にできる

g(x)g(x) は多項式だけではありません。 三角関数・指数関数・対数関数も g(x)g(x) にできます。 ここでは実戦で使う例をまとめます。

9.1 三角関数を g(x) にする

sinxcosxdx\int \sin x\cos x\,dx

置換で解く:

u=sinx,du=cosxdxu=\sin x,\quad du=\cos x\,dx sinxcosxdx=udu=u22+C=sin2x2+C\int \sin x\cos x\,dx =\int u\,du =\frac{u^2}{2}+C =\frac{\sin^2 x}{2}+C

頭の中で解く:

cosxdx=d(sinx)sinxcosxdx=sin2x2+C\cos x\,dx=d(\sin x) \Rightarrow \int \sin x\cos x\,dx=\frac{\sin^2 x}{2}+C

9.2 指数関数を g(x) にする

e2xdx\int e^{2x}\,dx

置換で解く:

e2x=exex,u=ex,du=exdxe^{2x}=e^x\cdot e^x,\quad u=e^x,\quad du=e^x\,dx e2xdx=exexdx=udu=u22+C=e2x2+C\int e^{2x}\,dx =\int e^x\cdot e^x\,dx =\int u\,du =\frac{u^2}{2}+C =\frac{e^{2x}}{2}+C

頭の中で解く:

e2x=(ex)2,exdx=d(ex)e2xdx=e2x2+Ce^{2x}=(e^x)^2,\quad e^x\,dx=d(e^x) \Rightarrow \int e^{2x}dx=\frac{e^{2x}}{2}+C

9.3 対数関数を g(x) にする

(logx)5xdx\int \frac{(\log x)^5}{x}\,dx

置換で解く:

u=logx,du=1xdxu=\log x,\quad du=\frac{1}{x}dx (logx)5xdx=u5du=u66+C=(logx)66+C\int \frac{(\log x)^5}{x}\,dx =\int u^5\,du =\frac{u^6}{6}+C =\frac{(\log x)^6}{6}+C

頭の中で解く:

1xdx=d(logx)(logx)5xdx=(logx)66+C\frac{1}{x}dx=d(\log x) \Rightarrow \int \frac{(\log x)^5}{x}\,dx=\frac{(\log x)^6}{6}+C

9.4 合成をさらに重ねる例

exsin(ex)dx\int e^x\sin(e^x)\,dx

置換で解く:

u=ex,du=exdxu=e^x,\quad du=e^x\,dx exsin(ex)dx=sinudu=cosu+C=cos(ex)+C\int e^x\sin(e^x)\,dx =\int \sin u\,du =-\cos u + C =-\cos(e^x)+C

頭の中で解く:

exdx=d(ex)exsin(ex)dx=cos(ex)+Ce^x\,dx=d(e^x) \Rightarrow \int e^x\sin(e^x)\,dx=-\cos(e^x)+C

9.5 分母型の対数合成

dxx{1+(logx)2}\int \frac{dx}{x\{1+(\log x)^2\}}

置換で解く:

u=logx,du=1xdxu=\log x,\quad du=\frac{1}{x}dx dxx{1+(logx)2}=du1+u2\int \frac{dx}{x\{1+(\log x)^2\}} =\int \frac{du}{1+u^2}

頭の中で解く:

1xdx=d(logx)dxx{1+(logx)2}=du1+u2\frac{1}{x}dx=d(\log x) \Rightarrow \int \frac{dx}{x\{1+(\log x)^2\}} =\int \frac{du}{1+u^2}

9.6 まとめ

  1. 多項式に見えなくても、まず中身候補を1つ決める
  2. その微分が見えれば、同じ公式で処理する
  3. 見えないときは分解・係数調整で「微分」を作る

10. 定積分では区間処理が最優先

不定積分で直接読めても、定積分ではミスしやすいです。 使っている公式自体は同じで、違いは区間処理だけです。

例1(直接評価)

012x1+x2dx=[log(1+x2)]01=log2\int_0^1 \frac{2x}{1+x^2}\,dx =[\log(1+x^2)]_0^1=\log 2

これは4章の不定積分を作ってから、最後に上下限を代入した形です。

例2(置換して区間変換)

01xex2dx\int_0^1 x e^{x^2}\,dx u=x2, du=2xdxu=x^2,\ du=2x\,dx

区間は

x=0u=0,x=1u=1x=0\to u=0,\qquad x=1\to u=1

なので

01xex2dx=1201eudu=e12\int_0^1 x e^{x^2}\,dx =\frac{1}{2}\int_0^1 e^u\,du =\frac{e-1}{2}

ここで大事なのは、uu に変えたら評価まで uu で進めることです。

11. よくあるミスと回避法

  1. 係数調整を忘れる
  • 例:(3x+1)5dx\int (3x+1)^5 dx をそのまま (3x+1)66\frac{(3x+1)^6}{6} にしてしまう
  • 対策:内側の微分係数を必ず確認する
  1. logg(x)\log|g(x)| の絶対値を落とす
  • 対策:分母型は原則 |\cdot| 付きで覚える
  1. 定積分で区間処理を省く
  • 対策:置換直後に上下限を書き換える
  1. 直接読みと置換を中途半端に混ぜる
  • 対策:1問ごとに方針を先に決める
  1. 途中で型が変わったのに押し切る
  • 対策:変形後に型を再判定する
  1. 公式の f,F,gf,F,g の対応を取り違える
  • 対策:最初に「f(u)f(u), F(u)F(u), g(x)g(x)」を1行メモする

12. 判定フローチャート(実戦用)

  1. 「中身」候補 g(x)g(x) を探す
  2. 近くに g(x)g'(x) があるか確認する
  3. 係数違いなら定数調整する
  4. g(x)g(x)を置換して計算する or 公式 f(g(x))g(x)dx=F(g(x))+C\int f(g(x))g'(x)dx=F(g(x))+C に当てる
  5. 定積分なら区間を先に処理する

13. 例題演習

問題1

6x3x2+1dx\int \frac{6x}{3x^2+1}\,dx
解答・解説を見る

分母に中身を作ると

g(x)=3x2+1,g(x)=6xg(x)=3x^2+1,\quad g'(x)=6x

です。分子がちょうど g(x)g'(x) なので、公式

g(x)g(x)dx=logg(x)+C\int \frac{g'(x)}{g(x)}dx=\log|g(x)|+C

をそのまま使えます。

6x3x2+1dx=log(3x2+1)+C\int \frac{6x}{3x^2+1}\,dx =\log(3x^2+1)+C

確認として、右辺を微分すると

ddxlog(3x2+1)=6x3x2+1\frac{d}{dx}\log(3x^2+1)=\frac{6x}{3x^2+1}

で元の被積分関数に戻ります。

問題2

01xex2dx\int_0^1 x e^{x^2}\,dx
解答・解説を見る

まず中身を

u=x2,du=2xdxu=x^2,\quad du=2x\,dx

と置きます。積分には xdxx\,dx があるので

xdx=12dux\,dx=\frac12 du

と変換できます。さらに定積分なので区間も変換します。

x=0u=0,x=1u=1x=0\Rightarrow u=0,\qquad x=1\Rightarrow u=1

よって

01xex2dx=1201eudu=12[eu]01=e12\int_0^1 x e^{x^2}dx =\frac12\int_0^1 e^u\,du =\frac12[e^u]_0^1 =\frac{e-1}{2}

この問題のポイントは、uu に変えた後は 最後まで uu のまま評価することです。

問題3

dx(2x1)3\int \frac{dx}{(2x-1)^3}
解答・解説を見る

分母の中身を

u=2x1,du=2dxu=2x-1,\quad du=2\,dx

と置くと

dx=12dudx=\frac12 du

です。また

1(2x1)3=u3\frac{1}{(2x-1)^3}=u^{-3}

なので

dx(2x1)3=12u3du=12u22+C=14(2x1)2+C\int \frac{dx}{(2x-1)^3} =\frac12\int u^{-3}du =\frac12\cdot\frac{u^{-2}}{-2}+C =-\frac{1}{4(2x-1)^2}+C

指数の積分

undu=un+1n+1+C(n1)\int u^n du=\frac{u^{n+1}}{n+1}+C\quad(n \neq -1)

を使っているので、n=3n=-3 のときは u22\frac{u^{-2}}{-2} になります。

問題4

2xlog(1+x2)1+x2dx\int \frac{2x\log(1+x^2)}{1+x^2}\,dx
解答・解説を見る

分母の中身を

u=1+x2,du=2xdxu=1+x^2,\quad du=2x\,dx

と置くと、分子の 2xdx2x\,dx がそのまま dudu になります。 したがって

2xlog(1+x2)1+x2dx=loguudu=12(logu)2+C=12(log(1+x2))2+C\int \frac{2x\log(1+x^2)}{1+x^2}\,dx =\int \frac{\log u}{u}\,du =\frac{1}{2}(\log u)^2+C =\frac{1}{2}(\log(1+x^2))^2+C

最後の式は

ddu(12(logu)2)=loguu\frac{d}{du}\left(\frac12(\log u)^2\right)=\frac{\log u}{u}

を使っています。 「log\log が乗っていて、分母に同じ uu がある」形は 12(logu)2\frac12(\log u)^2 を疑うと速くなります。

14. まとめ

  • 積分で最初に見るのは「中身」と「その微分」
  • 使っている本体は f(g(x))g(x)dx=F(g(x))+C (F=f)\int f(g(x))g'(x)dx=F(g(x))+C\ (F'=f)
  • 微分形が見えれば、計算はかなり短くなる
  • 直接読みは便利だが、迷うときは置換を明示する

まずは1日3問、 「中身は何か」「その微分はあるか」だけを毎回確認してみてください。 この習慣で、積分の見通しは一気に良くなります。

筆者は置換積分の記述が面倒だったので、高校時代は置換をほとんど書かずに積分を処理していました。 ここまでの話を理解していれば、だれでも「頭の中で置換して解く」感覚は身につきます。 ただし、迷う問題では置換を明示する方が安全です。 速さと正確さを使い分けながら、解き方の再現性を上げていきましょう。

実戦でこの感覚を定着させるなら、短い演習を毎日回すのがいちばん効きます。 次の問題で、まずは「中身」と「その微分」を探す練習をしてみてください。

高橋 アイコン 高橋